【連載】TROUT LURE FISHING 4SEASONS #1本来の解禁日の姿

秋田/佐藤浩二

月刊『釣り東北&新潟』バックNo.378より連載がスタートした「TROUT LURE FISHING 4SEASONS」。トラウトルアーフィッシングを多角的に考察してきた連載が釣り東北WEBにて再出発!月刊というシーズナブルな縛りから、随時、タイムラグを少なくフレッシュウォーターよろしくフレッシュな情報や事情、メソッドなどをこの場から発信していけたらと思います。3月1日から東北、新潟各所で渓流やサクラマス釣りが解禁し、私のメインフィールドである秋田県も一部河川が解禁(全面としては4月1日より)となった。今回はその21日の解禁日の様子と、解禁初期の傾向と対策を考えてみたいと思います。

2月は4月並み、3月は季節が後退?

早生種の桜であり例年では3月末頃に開花していたが今年は2月で開花した

今冬は全国的に少ない降雪量から暖冬傾向にあり、山にも街にも雪が殆どない異様な光景の冬でした。原因はエルニーニョ現象によるものであるという報道ですが、これが温暖化によるものか、地球の時間軸の中での一時的なことなのか? これに関しては何とも言えないが、現実、この状況下で2月は晴れれば温かく、本来、雪が降るべき気圧配置では雪でなく雨となっていた。2月なのに雪代のような増水と濁りに見舞われたりし、3月はもうこのまま春になるのか?と思いきや、帳尻を合わせるかのように3月は北国のみならず関東や以南も厳しい寒さに見舞われる状況を迎えた。 実際、四半世紀ひと昔前の東北の渓流解禁事情では、彼岸とはいえど内陸・沿岸問わず平野部でも積雪は多く、渓流山間部となると川に雪庇が張り出し、入渓や退渓も一苦労。気温は上昇しても水位は変わらず(気温が上がり切れず融雪もならない)場合では雪が降りしきる低温で、トップガイドが凍結するなど厳しい状況下が通例であり、ここ近年の温かい状況下での解禁が異様であったと言えるのではないでしょう? よって21日、解禁を迎えた川の雪景色の様相は筆者にとってはある意味、懐かしい本来の解禁の景色に感慨深いものを感じながらのエントリーとなりました。

気温4度、水温は8度。ナイロンを選択するか?と悩んだが、水温の高さと無風という点を加味し、今回はPEラインで臨むことにした

2月の状況から見て魚のコンデションを予測する

これは今年に限ったことではなく、また筆者のみならず渓流アングラ―であれば誰でも算段することであろう。改めて記すことになることをご容赦願いたい。

1月下旬でもう既にガガンボの飛翔や雪虫を見つけていたので、今冬のトラウト達の食事事情は潤沢なほうであったと私は睨んでいました。気温の高さ、雪の少なさを踏まえ、トラウトの越冬状況も厳しさは軽減されたであろうと。しかし3月で寒の戻り(というか例年通りの季節感)になったとしても1月、2月でのコンデション面があるので、解禁はタフな釣りからは軽減されると筆者は睨んでいました。

ところが当日を迎える2日前から強い寒波に降雪があり、そこでのコンデションのタフさは魚やフィールドに起因するのでなく河川選定での他のライバルアングラ―との兼ね合いのタフコンデションを見込むことを念頭にどのポイントからエントリーし、どう攻めるか? その筋書を丹念に練ります。これは解禁のみならず、例えばGWや連休などの混み合う期間、梅雨、猛暑(盛夏)シーズン終盤など季節の節目、節目で緻密に考える。これを常に心掛けたいものです。

筆者の攻め方の段取り

ミノー全盛の現代ですが、私の場合、低水温時はボトムの取りやすさを考え、また今回に至っては新調したロッドの調子を確認すべく、まずはスプーンを結ぶことが絶対です。スプーンでのアクション、ラインの取り方が自分的に納得できるものであれば、フローティングミノーでのサーフェイス攻略、縦のジャーク、さらにはややウェイトのあるジグなどのアクションにも難なく追随並びに操作できるという認識でおります。

スプーンにおいて特に基本となるのが5gでカラーはゴールド単色。これは私的パイロットルアーであり、皆にもその日を占う「これ!」というパイロットルアーがあるかと思います。もしも普段、何気に考えず直感や感覚でチョイスしている…これも勿論アリ! と思います。が、少しアカデミックかつ博奕ではなくまずは手堅く1匹とコンタクトをしたい! そういう思いのほうで悩みあぐねていたら、基本軸となるルアーを1つ持つ、決めておく。これを念頭にしたらきっと釣り方の視線、意識が変えられるのではないでしょうか?

掌サイズを中心に写真のようなイワナ、ヤマメが小気味よい躍動でティップを揺らしてくれた。この感触に「ああ、今年も始まるんだなぁ」という感慨深い気持ちになる

狙い澄ましたその時!

気温の大きな変化もないので、寒冷期のような水量(減水気味)でトロ場を拾いながら遡行すると、大き目のトロ場の脇のヨレで漬物石大の石が数個固まっているポイントに。スプーンではなく50mmのミノーをゆっくりとしたジャークを交じえて引いてみると水底の石の脇(厳密には下)から大きな魚影がやる気なくミノーと間隔を保ちチェィス…というより様子を見ながら追随する姿がありました。2投目では反応なし。

そこでスプーンに交換し、フラッシングで刺激しようかとも考えましたが、イレギュラーバイトを誘うよりも手堅く食性に訴えるほうに賭け、リアルベイトに寄せたジョイントミノーを付け直しキャスト。ボトム近くまでフォールさせ、岩の下部のエグレの水平辺りで止め(魚の視界に入るように)、そこからゆっくりと立ち上げさせようとアクションを入れた瞬間に鈍重な感触と共にロッドが引き絞られ水面がドタンバ! と鈍い飛沫を上げて、鈍い色のボディーが水面でのたうつ。解禁早々からドラグの小気味良い音を聞けるとは夢にも思わず、低水温も今回は味方か、すんなりネットインしたのは46cmのやさしい顏のメスのイワナでした。

この冬は温かったとはいえ、冷たく暗い水底で乗り越えた逞しい生命力にいつも感動させられる…

漫然とせずに

釣りを趣味として、「今期は」「何月は」と何かとテーマを設けてチャレンジしてみると、今までのハマり方が更に深淵なる楽しみに繋がるかと思います。長年嗜んできたアングラ―然り、今年から渓流釣りを始めてみようと思う方でも右も左も分からずとも、まずは1匹。あるいはこうゆう流れで釣ってみたいという方も然り。仲間内であれば共通のテーマを通して、その情報を共有してみると自分の気付かなかった発見やデータの収穫は必ずあるかと思います。

ちょっとアカデミックに突っ込んだ釣り。その考察の答えは決して偶然ではなく、結果がサイズや数、タフなシーンならそれらを駆使して得た1匹はかけがえのない貴重な答えになると思います。さぁ、今シーズンも始まりました。共に楽しみましょう!

季節は駆け足になるのか、それとも季節感はなくなるのかも? そんなことに気付かされ考える。自然の中でならなおさらのこと…

WRITER

佐藤 浩二

日本山岳ガイド協会認定 登山ガイド[ステージⅡ]

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登山ガイドの傍ら渓流釣ガイドを展開する。北東北の民俗学、風習にも造詣が深い。

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