だから私はナイロンを使う…低水温期の渓流ライン戦略

文/編集部、写真/バリバス、協力/森本正善(バリバスフィールドスタッフ)

PEラインの台頭により、渓流ルアーフィッシングにおいてもそのシェアを広げていく一方で、黎明期から主力ラインを担ってきたナイロンラインもまた根強い支持を得ている。それぞれのライン素材には適材適所があり、複雑な流れの中を狙わなければいけない渓流釣りでは、そのラインでしかキャッチできない魚がいるのも事実だ。本稿ではPE、ナイロンを使い分け、「解禁期など気温、水温の低い時期はナイロンライン一択ですね」そう話す、森本正善さん(バリバスフィールドスタッフ)に岩手県解禁期の釣行模様(VARIVAS TVロケ時)とライン戦略を伺った。

低水温期はルアー移動距離を抑えた縦の釣り

3月1日に渓流釣りが解禁となる岩手県。場所にもよるが例年ならば内陸部では残雪が多く、沿岸の単独河川が狙い目となるのが定石。2月中は気温も高い日が多く、沿岸河川ではベストコンディションで狙えるとそう思っていた矢先、解禁日前後にまさかの大雪に見舞われ状況が一変。戦略を練り直さなければいけないアングラーも多かったことだろう。

森本さんの釣行は解禁間もない3月上旬のこと。降雪や低気温の影響で水温が低く、釣行した沿岸部の河川各所で計測した地点の最低水温が0.5度、高くても3度で、魚の低活性が予想できた。

しかし、いざ蓋を開けてみれば意外にも魚に反応させられることができ、先行者の形跡もありながらヤマメ・イワナのツ抜け釣果に最大魚はイワナの31cmと楽しむことができた。反応させることができたとはいえ低活性には間違いなく、ルアーを追う距離も短かく、この時期らしいといえばらしい反応だ。

そこで森本さんが一番反応を得られたという釣りがスローな縦の釣りだ。水温が安定しこの時期に魚が着くと予想させるトロやプール、滝下、堰堤下などの大場所にてヘビーシンキングミノーを用い、弱めのトゥイッチで移動距離を抑えて追いの悪い活性の低い魚に口を使わせるものだ。実際に今釣行では縦の動きも得意とするジップベイツ「リッジフラット50S」(55mm/5.3g)を使い、前述の大場所にて好反応を得られた。

ルアーの動かし方は1stフォールでボトムに着底させ、そこからショートピッチのリフト&フォールといえば分かりやすいだろうか? チョン、チョン、チョン…と弱くロッドを縦に動かし、ルアーがフリーになった瞬間に発生するラインスラッグ分だけ回収する移動距離抑えたネチネチ攻撃が功を奏した。また、時折ゆっくりロッドを持ち上げ(最低限ミノーのウォブリングを感じる程度)、再度着底させる違った縦の動きを見せるのも効果的であったそうだ。この縦の釣りを行う上ではボトムまで確実にルアーを送り込む、レンジキープ、アクションが重要で、それにナイロンラインのメリットが寄与する。

ナイロンラインを使う理由

まず、この時期に森本さんがナイロンラインを使う最大の理由はトラブルが少ないことだ。気温も低い解禁期だとPEの場合、水を引き連れてくることにより凍ってしまいキャスト時に上手くライン放出されないなどのトラブルが多いにある。また、ショックリーダーを必要とするため、再結束時にグローブを外して行わなければいけない、よって時間を要してしまうからだ。その点、ナイロンはPEほど水を引っ張ってこず凍結も少ない。そして基本的にはルアー(スナップ)と直結のため結束しやすい点もメリットだ。

次の理由は、前述したスローな縦の釣りにおいて深いレンジまでルアーを届けるという意味でも水馴染みの良いナイロン(モノフィラメント)は、しっかりとボトムレンジまでルアーを送るのに貢献してくれる。PEの場合は浮力があるために水面に置いたラインが引っ張られ、それが難しい。森本さんが行う移動距離を抑えた縦の釣りは、PEでビシバシ叩いてルアー自体のブレーキ力を使うのではなく、しなやかなナイロンの特性を利用した優しく弱め(スローテンポ)のトゥイッチで艶かしくルアーに命を吹き込む。これが追いの弱い低水温期に効果的だ。

そしてしなやかなナイロンは衝撃吸収能力にも長ける。適度な伸びがクッションとなり、大物狙い、不意の大物でも安心してファイトに挑めるところも大きい。勿論、森本さんはPEのメリットも理解し、魚が流れに着くハイシーズンの瀬の釣りや飛距離が必要な場面で使用し、適材適所でラインを使い分けている。

見やすいが正義

森本さんナイロンラインを使う場合、VARIVAS「スーパートラウトアドバンス[サイトエディション]」を使っている。名前から想像できるように、視認性に優れるライトニンググリーンーカラーを採用。こと木々が生い茂る深い沢では光が届きにくい暗所も多く、見やすいラインはルアーのトレースラインやキャストコースを把握できるなどメリットが大きい。 基本的にはシーズンを通して同ラインの3or4Lbに直結でも良いが、時として活水、低下性時など魚がラインカラーを嫌うケースも出てくる。その対策としてショックリーダーかつステルス性を高める意味で「トラウトショックリーダー」4or6Lbを40cm程取って結束する場合もあるという。

「スーパートラウトアドバンス[サイトエディション]」

スペック-SPEC-

3/4/5/6/8Lbの全5サイズ、100m巻、1,200円

今年もまた渓流シーズンが始まった。どんな出逢いが待っているのだろうか…

今回は渓流解禁期におけるナイロンラインのメリットを紹介してきたが、いかがだったろうか? 是非、ライン特性を理解し渓流フィッシングライフにお役立て頂きたい。今回の釣行はYouTubeチャンネル「VARIVAS TV」にて3月下旬以降に公開予定

タックルデータ

【ロッド】バレーヒル「アークストリームASS-50」

【リール】ダイワ「17セオリー2004H」

【ライン】バリバススーパートラウトアドバンス[サイトエディション]3Lb」

【ルアー】ジップベイツ「リッジフラット50S」

取材協力/バリバス

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釣り東北WEB編集部

株式会社釣り東北社

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「釣り東北WEB」の運営、取材、撮影、編集、映像制作をメインに行う。他、ワカサギの穴、トラウトステージといった東北で人気ジャンルの別冊を刊行。

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