徹底ボトム攻略ミノーで攻める渓流・激戦河川

秋田/佐藤浩二

2024年、シマノ・カーディフシリーズに新たに加わった「リフレイン45XS BOTTOM spec」。同シリーズの50HSよりダウンサイジングになりながらもウエイトは2.1g増。小型ミノーという構造上、コンパクトにしながらウエイトアップし、さらにアクションを成立させるという技はかなり難しいということは容易に想像できる。

そのニューモデルがリリースされてから渓流が全面的に解禁を迎え、遠征派アングラ―達が待ちわびたゴールデンウィーク、その連休という釣り三昧に浸かれるタイミングは、暖冬少雪という今冬であったとしても雪溶け水の増水低水温というコンデション的にはタフネス。今回、シマノがトラウトミノーイングに対し「リフレイン」に新たに加えた45XSは、どのような答えを導き出そうとしているのか? それを体現すべく、あえてこの状況下で使ってみることにした。

※ルアースペックなどは釣り東北WEB「【新製品】シマノ「カーディフ リフレイン45XS BOTTOM Spec」」こちらの記事もご参考に!

1つのカラーに注目したい

今回、このリフレインのカラーラインアップの中で、お気付きになられた方は90年代から今日まで嗜まれてきた方であろう…。昨今、エリアトラウトルアーですら見掛けなくなった「ゴースト」に傾倒したカラー(仕様)[STクリアベイト」 がラインアップされた。

STクリアベイト

今の時代、様々な塗料、ホログラムマテリアルに溢れる中、あえてゴースト系も加えてたのか? 奇をてらうのではなくゴーストが持つアピールの優位性かつ、そこに加えて施されている同社の今や代表的であるSCALEBOOSTも加えての「透過」と「可視」の2面性からなる鉄壁ともいえるアピール力を持つと筆者は考える。

今では失われつつあるカラーパターンの再来に、往年のアングラ―諸賢にとっては歓喜、新たにエントリーしたアングラ―諸兄にしてみれば新鮮と、新旧の感覚が交錯することで現代のトラウトルアーの新しいアプローチ(意見交換)が生れることと思う。

また、同社のインプレッションにも45XSに設けた空気室によりバルサミノーに迫るレスポンスを謳っているが、バルサミノーでは実現できないインジェクションというマテリアルだけが実現できるゴーストカラー、先で触れた光に関わる2面性に加え、インジェクションとバルサの2面性も追求している点で、シマノ渾身の意欲作と強烈に感じる。

いざ実釣! キャスタビリティーの良さを実感

GWに入る4月末、雪を潤沢に抱える鳥海山を源とした河川の中流域(秋田県)。入渓のアプローチの容易さも相まって、人気のあるこの河川。今回はあえて陽光が高くなる正午近くに攻めてみることにした。それは導入部でも触れたもう一つの足枷となりえる要因、雪溶け水の流入も意味する。

暖冬とはいえ豊富に雪を抱える鳥海山
誰もが垂涎するポイントに居残る一匹をどう捉えるか?

まだこのタイミングでは田圃は掻いておらず。田圃が掻かれるとなると搾水により水量は減るが、今回は皆無。写真の通り、細い流程で太く厚い流れを形成。それ以外の穏やかな区間は先行者が当然見逃すはずもないだろう…。竿抜けを見つけ、どう攻めるか? アングラ―の技量もあるが、何よりもそれを実現するためのルアーの真価が最も問われることと思う。

少し段差のある落ち込みと、手前で急な流れ込みを形成する複雑なポイント。シンキング、いやフローティングでの軽快なレスポンスで探りたい流れでヘビーシンキングというルアーでははたしてどうだろうか…最悪、ワンキャストワンロストという可能性もあり得る…という心配を含みながらのキャスト。その答えは即、返ってきた。

杞憂に過ぎなかったのである。まずウエイトの優位性抜きに、コンパクトなボディシェイプでの飛びの姿勢が奇麗である。奇麗ということは空を裂き飛ぶということである。それに加えてのウエイトである。手首のスナップでも、向かいの護岸壁にぶつかるほどの勢いでキャスタビリティに優れていた。

そしてコンパクトボディが起こすもう一つのメリットが着水が静かであること。スッと水に吸い込まれるような感覚である。複雑な流れに加え、水底にストラクチャ―が多いセクションであり、着水と同時にアクション、立ち上がりもロッドに伝わる感触でレスポンスが良いことが分かった。

良型ヤマメ出る

暖冬とはいえ、長い冬を乗り越え、陽光の元、もう盛期のコンデションと見間違うばかりの良型ヤマメ

早速、1stコンタクト。15cmあるかないかの小さなヤマメがヒット。ただし、これは無垢な小型ならではの反応だろう。写真に納めずリリースとなったが、この状況で早速の結果に筆者は正直、些か驚く次第であった。

着水と同時アクションから、このルアーの調子が分かる感じから、今度は少し沈め気味からのスローリトリーブで誘う。フォールさせる最中、このウエイトではすぐに沈むだけかと思いきや、空気室の設定に加え、リップの薄さも相まってかフォールの感覚がきっちり感じることができる。

カウントを取る、他、アクションを加えた際にアングラ―に多くの情報量を与えられるミノーはそうもないな…そう思いながら、トゥイッチからストップ、そしてトゥイッチとアクションを加えていく。その最中、ストップでの食わせのタイミングであった。やはり日曜の正午、もう徹底的に攻められたであろうスレッカラシの食い方である。ロッドを小気味よく引き絞ったのは25cmの良型のヤマメだ! スレッカラシとはいえ、ベリーに一閃!であるのが嬉しい。

水押し強くともボトムにコンタクトできる

さて、飛びの姿勢が良いということは、狙い定めたポイントへのシュートを高確率にしてくれる利点がある。それは遠投性もあれば、極わずかなピンスポットへと、様々なアプローチをしてくれる。当に渓流ルアーフィッシングにエントリーしたての諸兄にとっては、タフコンデション下での越えられない1匹に対しての壁を打破するために。スキルアングラ―にしては更なるサイズアップへと、各々の課題、目論みに充分応えられる存在、その選択肢に「リフレイン45XS BOTTOM spec」があっていいと感じられた。

複雑さも何もない、もう直流かつ厚い流れ。逆引き・ダウンクロスでも飛び出すことなく足元までしっかりと泳ぎきり、そしてアップストリームでも押し流されることなく、ロッドの角度で立てればサーフェイス、寝かせれば名の通り当に「ボトム」でスイムアクションができる。ゴーストカラーはシェード下でもSCALEBOOSTのフラッシングで視認性、陽光下では素材自体の透過による屈折の反射と視認性、そして警戒感を持つ魚に対しても違和感のないアピールができると感じられた。

手返し良い攻めの釣りができる

ポイント、ポイントで小型中心に時折、20~23cmクラスのヤマメも見ながら釣り上がる。手返しからなる軽快感ある釣りのテンポ、それもミノーが持ち得るキャスタビリティの良さを物語っている。

圧し強い流れ、遡行的に厳しい局面、流れの最奥に着水。シェードに潜んでいるであろうターゲットを引きずり出せると、このミノーならそのような演出が一層、現実味を帯び、そして実現可能である…いいアイテムを手にすると気持ちにも余裕が生まれる。

この押しの強い流れにも、ものともしない

そしてその通り、シェード下から流れをものともせずルアーを引ったくる影。最後は良い型のイワナでフィニッシュ。これはルアーのアクションも然ることながら、この猛然とした流れで攻略しきれなかったがゆえに残っていたイワナであるとも思えた。

リアフックギリギリ。この期間に攻めに攻められて警戒心に満たされていたであろうが、ルアーが持つサイズ感、アクション、そしてカラー。全てが合致した時に警戒心も抗えないほどの誘惑であったことだろう

今回使用したカラーは好天下という状況でSTクリアベイトで終始通したが、他のカラーラインアップでは、たとえば濁り時ではチャートの展開、早春の稚魚から当歳系でのベイト意識ではナチュラル系、そして今回のようにスレッカラシのシーンではクリアと、状況で使い分け戦略を練ってみたいと思う。

ハイプレッシャー下で真価を発揮するミノー

この寄稿が掲載される頃はカレンダーは進んでいることと思う。それは更なる渓流が楽しくなる盛期を迎えると共に、ライバルであるアングラー達が群雄割拠するであるだろうし、また、梅雨…いや線状降水帯などの災害級の大雨、夏の猛暑による高水温や渇水など自然の猛威も加味されることであろう。

そんな厳しい環境の元で生き長らえ狡猾になっていくトラウトと対峙する上で状況を打開するためにも、この「リフレイン45XS BOTTOM spec」を是非、ここぞというシーンのためにケースに携えておいてはいかがだろうか?その答えを手中にした時、きっと貴方は破顔一笑していることであろう。

WRITER

佐藤 浩二

日本山岳ガイド協会認定 登山ガイド[ステージⅡ]

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登山ガイドの傍ら渓流釣ガイドを展開する。北東北の民俗学、風習にも造詣が深い。

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