【連載】酒魚放浪記WEB 第2回 ツルツル食感!?のクロソイ

秋田/佐藤 浩

前回の記事はこちら「第1回/リュウグウハゼとツマグロスジハゼ

暑さ寒さも彼岸までというが、今年の春彼岸は寒波がやってきて季節外れの雪となった。しかし、スーパーの酒類売り場には春酒コーナーができ、桃色の春らしいラベルの日本酒が並び、見ているだけで春が来たような、ウキウキした気分になる。どれにしようか?お気に入りのラベルを選ぶのもまた楽しい。釣りのほうはというと、海は荒れ、渓流秋田早期解禁日の21日は、雪景色となった所も多かった。せっかく釣り物が増えてきてのウキウキ気分も沈んでしまうが、24日の日曜日はガラリと空気が変わり春の陽気! さてどの肴(さかな)を釣りに行こうか? 春告魚のメバルの煮付けも良いが、以前連載でやっているので、今回はクロソイを釣りに男鹿半島の防波堤へと車を走らせた。

根魚の思い出

私の実家は秋田県沿岸南部にある。50年前の子供の頃から防波堤の穴やヘチにエサを落として根魚と遊んでいた。その当時はクロソイや時々アイナメといった感じで、クロソイは面白いように釣れたけど、最近は殆どクロソイを見かけなくなった。その代わりに昔は居なかったメバルやカサゴ、ムラソイが釣れるようになり魚種が変化してしまった。カサゴは暖流系の魚なのでこれも水温の変化の影響で、やはり北方系の魚の分布が北上しているのかもと思いながらも、メバルが増えたのはなぜ? といった疑問もある。いずれにせよ海の中はカオスなのは間違いないだろう。あと子供の頃の思い出で、これら根魚は良く釣れるのは良いが、針を外す時にメゴチバサミなど知らなかったので素手で外すのだが、エラ周辺のトゲが刺さるとしばらく痛痒くなり、釣れると嫌な魚でもあった。

久しぶりのルアーフィッシングでクロソイを狙う

今回はルアーで狙うので、想定する大きさは煮付けサイズなのでヘビィーなタックは不要だが、小さいメバルを避けるように、やや強めのタックルを用意。長さ7ftのチニングロッドにスピニング3000番、PE0.6号にショックリーダーとしてフロロカーボン10Lb、ルアーは3.5gのジグヘッドにエコギア「グラスミノー」4inで挑む。

夕まづめ勝負だが、天気も良いのでドライブがてら各漁港もチェックしながら向かう。秋田港に寄ると海の中にキラキラと光る無数のベイトが見えた。何の稚魚?か分からないが相当な数が居るようだ。そういえば真冬の2月も県南部の漁港で2~3cmの小魚が無数に泳いでいた。この防波堤の真冬は例年だと生命感が全くないので、これも温暖化? まあ、なんでもかんでも温暖化のせいにするのもどうかと思うが(笑)

夕方、まだ明るいうちに男鹿北部の漁港に到着。この日は大潮の満月。海は穏やかなので先端部にはヤリイカ釣りの人で一杯かと思ったが、イカ釣り人は居なかったのでヤリイカは不調なのか? 本命ポイントは、港の一番奥。船の荷揚げ場の外灯周りで、暗くなってシャローに入ってくるクロソイを中層のただ巻きで簡単に狙おうといった作戦。

まだ明るいうちから本命以外のポイントにキャストして試してみるが、当然、反応もベイトの姿もない。これは想定内だが、薄暗くなってきてギリギリ水中が見える時間帯になった。しかし、いつもなら小さなメバルやソイがルアーを追うのが見えてくるはずだが全く反応がない。潮が上げ止まりの時間なのでそのせいか? 

ついにその時が!

辺りが闇に包まれ、いよいよ外灯の明かりが灯る

いよいよ外灯が点き、潮は下げ始めている頃なので本命ポイントへ! 実は初めて入る場所で水深が分からなかった。比較的、大きな漁船が入っているので深いと思っていたが予想より浅く、リーリングしていると藻に触わる感触は伝わるがアタリっぽいのはない。

グロー系オレンジからピンクにワームカラーを変え、ゆっくり3回巻いたらストップみたいな感じを繰り返していたら、藻にタッチした感触からグイグイと魚の引きに変わった! なんとなく掛かってしまったのでヒット!と言うよりはラッキー!(笑) 上がってきた魚、否、肴は? 本命のクロソイだ。煮付けにはちょうど良いサイズ。大きな口にキョトンとしたお目目が可愛いが、あのエラのイガイガした鋭いトゲは可愛くない(笑)。辺りも冷え込んできたのでこの1匹で帰っても良かったが、久しぶりのルアーフィッシングが楽しくて止められない。空にはぼんやり満月も笑っている(笑)。楽しい気分とは裏腹にその後バイトはなかった。

狙い通り!?クロソイをキャッチ! 通算48魚種達成

そろそろ納竿しようかと思った頃、散歩してきた漁師さんと話をした。最近、冬の魚は全く獲れず、ヤリイカもカレイも網に入らないと嘆いていた。春のヒラメ漁が好調だからなんとかやっているが、アブラツノザメが大量で困っているとのこと。美味しい魚なので高く売れるのでは?と聞くと、1kg4円にもならず、自宅用のストッカーに貯まる一方だとか。 最後にこれから潮が動いて釣れるよ~と言われたので、その言葉を信じ、もう少し頑張ってみるが、何も起こらず終了となった(泣)。

クロソイの煮付けは◯◯◯◯食感!?

帰りはすっかり遅くなったのでクロソイには冷蔵庫で一晩明かしてもらうことにして、翌日スーパーの春酒コーナーで哲学者のごとく頭を抱え込み悩んでいる私がいた(笑)。どの酒も良さげで、これはもう一番春らしいラベルで選ぼうと、やっと選んだ1本は、桃色にウグイスが描かれたなんとも可愛らしい浅舞酒造「天の戸 春の純米酒」だ。

クロソイの調理開始! ウロコを掻き、エラを外し、ワタを抜く。水、醤油、砂糖、ミリン、日本酒で煮汁を沸騰させ、生姜と魚を投入。今回は落とし蓋をせず、煮汁を美味しくなるように願いを込めながら10分、回しかける。このひと手間を掛ける時間もまた楽しい(笑)。一緒に煮込んだインゲンを添えて盛り付けたら、いよいよ今宵の酒を開栓!

クロソイの身を箸でほぐし口に入れると、なんとも言えない食感! 乏しい自分のボキャブリティーではどう表現して良いか分からないので、娘に試してもらい感想を聞くと…ツルッツル!と表現した。なんじゃそりゃ~? と思いながらもう一口。うん!確かにほぐした身がしっかりしていて舌ざわりに張りがありツルッツル(笑)。味も、ソイの旨味が詰まり甘くて美味しい。酒はどうか? 春酒と銘打ってもどこが春??というような酒も多いが、桜の絵柄のグラスに注いだ天の戸は、爽やかで軽快な飲み口でまさにこの世の春。

ホーホケキョとウグイスが鳴いているのは酔っぱらった私の頭の中だけのようで、外は桜が咲く気配もなくまだ寒い。それでも海の中は、これからサケやアユの稚魚やシラウオなどベイトも増えてくるので、桜が咲く頃にはフイッシュイーターの春が来るだろう。それを肴に花見酒! グラスが乾く暇がない春がやっときます!

WRITER

佐藤浩

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秋田県在住。渓流やサクラマスといったルアーフィッシングにこだわりを持ち自然と向き合ってきたが、歳を重ねるにつれ、他の魚も釣ってみたい欲が増し、「酒魚放浪記」の連載スタートと共に、今では魚種、釣種問わず魚を追いかけている。

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