【連載】酒魚放浪記WEB 第1回/リュウグウハゼとツマグロスジハゼ

岩手/佐藤 浩

釣り東北が月刊誌からウェブに移行し早1ヶ月。長年関わってきた私はなんとなく釣り東北ロスとなり、連載の釣りに行く気になれない日々が続いていた。そのせいで原稿も遅れ…(なんちゃって)。本当は釣り物の少ない東北の冬のターゲットの一つイシガレイを狙い、数は釣れて好調だったが、釣れてくるのはタカノハガレイのみ。釣り人からは臭みがあり外道枠の魚だが、釣りたてのタカノハの刺身は大変美味しく、昆布締めになんかしたら、もうお酒が止まらない、止まらない(笑)。

こんな酔っ払いオヤジだが、ウェブでは初めまして! 魚を釣って食べるといった企画の魚種数チャレンジをしています。今後とも宜しくお願い致します。マダイなどの高級魚からウグイなど未利用魚までランダムに節操のない釣りをしていますが、ウェブ初のターゲットは、太平洋岸の外道の代表とされるリュウグウハゼだ。

ラグビー釣法を企む!

釣行のきっかけは、友達が岩手の漁港に投げブラーで根魚狙いで行ったらリュウグウハゼが沢山釣れ、天ぷらにしたらマハゼよりふわふわで美味しかったとのこと。そして「一緒に行きませんか?」とのお誘いが! ムムム、釣りとお酒の誘いは断る理由がないが…。いや、カレイに振られた私にとって渡りに船(笑)。

リュウグウハゼは三陸地方では通称ラグビーと呼ばれ、黒い縞模様が5本あり、ラガーシャツの模様に似ていることからラグビー。釣り人からは外道的な魚だが、根魚にとっては大好物らしい。大体魚からベイトとして好まれる魚は人間からも美味しい魚なので、不味いわけがなく楽しみなのだが、今回、私のもう一つの狙いは、リュウグウハゼをエサにデカい根魚を釣ることだ。

昔、釣り東北でラグビー釣法を連載していたが、秋田にリュウグウハゼは居ないので未体験のまま。メインターゲットは小物だけど、デカいアイナメを両手持ちでドヤっ!とウェブデビューを飾ろうと、あざといことを考えながら友達と合流。

あっさり1匹目をキャッチ

海面を見て分かるように太平洋側は穏やかだ
タックルはアジングタックルを流用

今回は友達の車で岩手の防波堤に向かった。途中、いつもなら大雪の山間部だが、記録的暖冬で、雪が非常に少なく驚いた。除雪から解放されるのは良いことだが、今後の自然に与える影響が心配だ。この日は数日前の春の陽気から一変、真冬の寒さだ。

着いたのは友達が前回、リュウグウハゼを釣った実績の大きな漁港の中の防波堤。とりあえず私の肴と魚のエサになるリュウグウハゼを釣り始める。

タックルは長さ7ftのアジングロッド。ラインは根掛かりが多いと聞いたので仕掛けの交換が簡単なのでナイロン4Lb直結にフジワラ「ノーマルブラー」からハリスを出した仕掛けにアオイソメを付けて海に投入。ハゼなのでマハゼ釣りのイメージで底をチョンチョンと叩く誘いを掛けながら巻いてみるがアタリはない…。

足下まで来たので回収するとなんだか重いと思ったら、リュウグウハゼが釣れてしまった! 簡単に釣れて拍子抜けしたが、初めて対面したリュウグウハゼは、薄いピンクの魚体にくっきりと5本の縞模様、顔はきょとんと愛くるしい。しかし、食物連鎖の下のほうの魚なのに、捕食者に見えやすいルアーのアピール系のようなカラーをしているのか? 優しそうな顔をしているので、どうぞ食べて下さい!と進化したのかも(笑)。だから生き残るために沢山居て簡単に釣れるのか! と、勝手なことを妄想しながら、あとは入れ食いで20匹位をブクブクのバッカンに活かしてキープしてから、ビッグ根魚を狙おうとしたが、そう甘くはなかった。

リュウグウハゼをキャッチ!これで連載通算46魚種目

アタリを取るための工夫

アタリがとにかく弱い。これは、私がマハゼのアタリのイメージで釣っていたからかもしれないが、アタリは繊細に弱く、例えば置き竿にしているとロッドをクイクイ持っていくより、ラインが弛んで分かることが多く、掛かってもマハゼのような引きはない。力には抵抗する気がない感じで、これもベイトとして進化してきたことの現れなのだろうか(笑)。

水深があるのでナイロンラインだったのも失敗だった。そこで中通しシンカーのテキサスリグに換えたら若干アタリが分かるようになり、数が出て酒の肴をキープしたところでラグビー釣法開始!

大型根魚ゲットなるか!?

こちらもテキサスリグの針にリュウグウハゼの上アゴに刺し、泳がせ釣りではなく、ワームのようにリフト&カーブフォールで誘う釣りだがアタリはない。

途中、岩手の友達が私たちを案内してくれるために来てくれた。移動しながら実績ポイントを案内してもらったが、残念ながらラグビー釣法初心者の私には一度アタリがあっただけ。投げブラーの友達は、良型のアイナメを釣り上げたが、私はリュウグウハゼ釣りの外道で小さなアイナメが1匹のみ。それと、小さな青い斑点のあるハゼ?が釣れた。岩手の方も初めて見たと驚いたが、魚種は分からない。針を呑み込んでしまったので、キープして終了。

友達たちが、車からテーブルを出して、なべ焼きうどんを振舞ってくれた。寒いフィールドでの暖かいうどんは最高で、友達の優しさと共に、気持ちまで暖かくなったところでお別れ。私たちも秋田へと帰路に就いた。

私には小型のアイナメ1匹
外で食べる鍋焼きうどんが染みる

青い斑点のハゼの正体

ツマグロスジハゼと断定した。これで47魚種目

自宅に帰ってから、青い斑点のハゼを調べたら、スジハゼらしい。スジハゼは最近までその特徴の違いでABCと3種類に分けて(例:スジハゼA)呼んでいいたが、2013年にそれぞれに標準和名が付けられ、このハゼの特徴・頬の黒いラインが2本、腹ビレが大きく黒く縁どられていることから、この魚はスジハゼAと呼ばれていたツマグロスジハゼと特定した。分布は東京湾と島根県以南とあるので、この魚も近年の海水温の上昇で北上してきた魚なのかもしれない。

リュウグウハゼを調理

リュウグウハゼをさばいてみる。当初フライにしようと思っていた。まず、ウロコをかいてみるが、マハゼのようなしっかりしたウロコはなく、汚れを落とすような感じだった。背開きにすると腹の上に引っかかる骨があるのか?キスやハゼのように包丁の通りが悪い他に、身が水っぽく上手くいかないので、内臓だけ取って唐揚げにすることにした。

ツマグロスジハゼは背中の前のほうにウロコがないそうで、その通り、体の後ろのほうだけにしっかりとしたウロコがあり、ネットの図鑑通りで面白かった。今回は数があるので、味付けせず170℃の油で素揚げにして、塩、レモン塩、ポン酢、マヨと味変で楽しむことにした。

驚くほど美味い!

お家居酒屋開店! 揚げたてに塩から試す。カリカリして身は水分が飛んで凝縮された感じか?味は普通に美味しい。

今宵の酒は両関酒造「RZ55純米吟醸亀の尾」。口に入れた瞬間、すーっと入ってくる爽やかな味わいで揚げ物との相性は抜群だ! レモン、ポン酢と味を変え楽しんだところで、ツマグロスジハゼを食べく比べ。正直、たいして変わらないだろうと思っていたが、身がしっかりして旨味も強く驚いた! 日本には500種ものハゼが居るそうだが、その全てに違った味わいがあるかもしれない。これからも、しばらくは続くと思われる海水温の上昇で、南方のハゼを食べられるかもしれない(喜)なんて、ふしだらなことを想像しながら、酔っ払いの夜は更けていく。

サックと唐揚げにしたら旨味凝縮!
今宵の酒は両関酒造「RZ55純米吟醸亀の尾」

東北にも在来で私が知らないハゼはまだまだ居ると思うので、釣って図鑑で調べるのも楽しそう。ただ、小さい魚だと同定が難しく、住環境の個体差など奥が深く、この道は多分沼であろう。それでもこれからは意識してハゼを釣っていくのも楽しいだろう。

WRITER

佐藤浩

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秋田県在住。渓流やサクラマスといったルアーフィッシングにこだわりを持ち自然と向き合ってきたが、歳を重ねるにつれ、他の魚も釣ってみたい欲が増し、「酒魚放浪記」の連載スタートと共に、今では魚種、釣種問わず魚を追いかけている。

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