岩手県盛岡市・岩洞湖
冬の釣りの代表格といえば氷上ワカサギ釣り。氷った湖や野池に乗り、穴をあけてワカサギを釣るスタイルだが、寒い時期の釣りにも関わらず、いまや大ブームとなり氷上釣りができるエリアは連日大賑わいとなっている。
ファミリーや初心者も楽しめるシンプルな釣りではあるが、非常に奥が深く、いや深すぎてその魅力は無限大で、釣り方やタックルなどにより釣果に大きな差が出る釣りでもある。今回はその独特なスタイルが際立つダイワワカサギテスターの千島克也さんに密着した!
1丁で叩き台を使わないスタイル
一般的にワカサギ釣りを始めてある程度仕掛けの扱いに慣れてくると、大抵は効率化を求めて左右1本ずつ竿を使用した「2丁スタイル」を取り入れる人が多い。2丁ゆえに、単純に針数が2倍なことは勿論、タナを探る、当たり仕掛けやエサを見分けやすいなどメリットも多く、数釣りも可能となる。2本同時に手に持って扱えなくても、叩き台を用意してとりあえず1本は置き竿にしておけば、1本を回収している間も1本はタナに仕掛けが入っているというのはかなりのアドバンテージといえる。
しかし、千島さんはあえて1丁スタイルにこだわっている。しかも叩き台は使用せず、竿をあぐらをかいた右膝の上に置いてアタリを取るスタイルで釣りをする。これは、千島さんのホームグラウンドである長野県松原湖で培った電動リールを用いない1丁の手繰り釣りがベースとなっている。
1丁スタイルのメリットは「1本の竿に全集中できる」こと。それは2丁スタイルよりもワカサギのアタリに集中できることでアタリの見逃し、アワセ遅れ、掛け損じを極力少なくできることは勿論、誘いなどの動作をより多彩に、丁寧にできる。また、繊細なアタリを取ってアワせて針掛かりさせるワカサギ釣りの楽しさを、1本の竿で濃縮的に味わえるという、千島さん自身のスタイル的な価値を高めることができる。
そして、その1丁スタイルにこだわった結果、千島さんの象徴「聞き上げ誘い」が生み出されたのだ。
聞き上げ誘いの神髄
聞き上げ誘いは、通常のように誘った後に竿を止めてアタリを待って取るのではなく、その名の通りゆっくりと竿を上げながら誘いつつ、かつテンションをかけること(=聞く)でよりアタリを取りやすくする釣り方。エサ(仕掛け)を積極的に動かし、ワカサギの目線を変え、本能を刺激して食いを立たせるという超攻撃的な釣り方だ。千島さんは基本的には全国どこのポイントでも聞き上げ誘いでワカサギを狙う。魚探で反応のあるタナに仕掛けを落として聞き上げ誘いをするが、パターン的には①タナを取る→小刻みに竿先を動かして止めてアタリを待つ→アタリがなければ聞き上げる→再び小刻みに誘う→この動作を3回くらい繰り返してアタリがなけれが仕掛けを落とす。基本的にはこれを繰り返すが、アタリを待つ時間は2~3秒だが、活性に応じて長くする場合もあり、聞き上げる幅は2~5cm程度。
聞き上げ誘いの方法
先述したようにあぐらをかいた膝(竿を持っている側)の上に竿を固定し、そこから膝上を這うように穴から仕掛けを遠ざけていくイメージで行う。膝に置かないで手で持ち、上に上げても良さそうだが、固定していないぶんブレてしまうので、膝に当てるのがベスト。
そしてゆっくり聞き上げている途中に、竿を止めて、穂先をチョンチョンと数回動かして止める。その止めた直後の穂先に現れる微妙な変化でアタリを取る。穂先が下がったり、曲がっている穂先の戻りが遅かったり、戻らなかったりという違和感系などアタリは様々だ。
アタリがあった際も、アワセは1丁のロッドに集中しているので即座に対応でき、掛け損ないも少なくなる。また常にテンションが掛かっている状態なので、アタリもダイレクトで分かりやすい。これらの食わせ方とアワセのタイミングによって、比較的針外れしにくい口元先端付近の理想的な箇所に針掛かりすることが多いため、巻き上げスピード8前後の速い巻き上げを基本としている。あとは掛かったワカサギを片手で針を外して、すぐに仕掛けを投入。この一連の流れも1丁なのでトラブルなく手早くでき、この手返しの良さが2丁にも勝るとも劣らない釣果を叩き出す。
確かに総合的には効率が高いのは2丁スタイルではあるが、かといって1丁スタイルが不利なのかというとそうとも限らない。タナがベタ底に限定され、アタリが少なく、かつ居食いでアタリ方がより繊細な時など、状況によっては2丁を上回る釣果を出すことも可能だ。それも1丁スタイルの倍返し的な?魅力ともいえる。そんな釣行が2024年2月、岩手県岩洞湖の氷上で繰り広げられた。
千島さん、初の岩洞湖で聞き上げ誘いを試す!
今回、岩手県岩洞湖は初チャレンジの千島さん。果たして聞き上げ誘いが通用するのか。
初日は移動日でもあったので、ドーム船でウォーミングアップ的に岩洞湖を楽しみ、翌日いよいよ氷上釣り本番となった。
夜明けと同時に湖面に降りる。場所によって釣れるサイズ、数、水深や地形などが変化している中、ガイド役の神坂正人さんと数日前からの釣果情報などを頼りに第三ワンドのディープエリアを魚探で探る。数箇所探り、底のほうに群れが濃く映り、間を置いても群れが抜けにくい良さげな15.2mのポイントにテントを張り、タックルの準備に取り掛かった。
電動リールはダイワ「クリスティア ワカサギ AIR」。外部電源による軽さとコンパクトなボディーは、千島さんが得意とする繊細な手繰り釣りとほぼ同じ感覚で行えると共に、電動リールの恩恵が手繰りの弱点(面白さでもあるが)ともいえる巻き上げ動作を補う、千島さんの釣りにはなくてはならない電動リールだ。
穂先はダイワ「クリスティア LTD AGS 誘惑 335 SS」。千島さんが「ここ一番で欲しいスペシャルな1本」というテーマで導き出した厳選調子。小さなアタリも見逃さない先調子で聞き上げ誘いにはピッタリな穂先となっている。また、AGSガイドを採用しているので、手感度が抜群なので、極端な話、よそ見をしていてもアタリが分かるという。
仕掛けはロングハリスのダイワ「快適ワカサギ誘惑ワイドピッチ」。聞き上げ誘いは幅広く誘うことで釣果を上げる釣りなので、ピッチが狭いとその効果を発揮できないので、全長120cmの針間25cmのピッチが広い仕掛けで狙う。
オモリはダイワ「クリスティアワカサギシンカーTG2 R」5g。1丁で攻めるので軽いオモリだとフォールが遅く手返しが悪くなるので、できる範囲で重くする。カラーにも拘りがあり朝一は赤色、明るくなったらグロー、濁っているときはゴールドを基本に使い分けている。
エサは基本的にサシを使用するが、アカムシもかなり有効なので併用して使用する。寄せのブドウムシも状況に応じて使う。
釣り方は、魚探に反応が底のほうに出ていることを踏まえ、まずオモリを底に着けないギリギリのタナにする。誘いは、小刻みに穂先を振って止める、アタリがなければ少しだけ(およそ2~5cm程度)聞き上げ、再び小刻みに穂先を振るの繰り返し。聞き上げのスピードは活性によって合わせるので色々と試してみる。活性が高い場合は速い聞き上げで問題ないが、低活性の場合は徐々に効き上げるスピードを遅くしていく。ただ聞き上げ誘い自体が底ベタを回遊しているなどの活性の低いワカサギの捕食スイッチを入れる釣り方でもあるので、極端に聞き上げるスピードを速くしたり遅くしたりすることは殆んどない。聞き上げるスピードよりはその後の小刻みに竿先を動かした後の穂先の変化を見逃さないことが釣果に繋がる。
これらを踏まえて岩洞湖を攻めたところ、朝一は活性が高く順調に数を伸ばしたが、時間と共に渋くなっていった。これに対して、針の大きさを1号から0.5号へサイズダウンし、エサの大きさも小さくし、食い込み、針掛かりの良さを促した。これでいくらかペースを戻したが、時間経過と共にアタリはあるが乗らない、掛かってもバレることが多くなったので、今度はアカムシをメインにし、巻き上げスピードもやや遅くしたところバレも少なくなった。アカムシはサシより細く食い込みが良いことと、長く付けることでアカムシ自体がユラユラと動きアピール力が高くなるので、渋い状況のときにはアカムシは非常に有効になるとのこと。
聞き上げ誘いは岩洞湖でも非常に有効だった!
結果、1丁聞き上げスタイルで午後2時頃まで撮影をしながらの実釣で232匹。隣で2丁のオーソドックスなスタイルで釣りをしていた、エキスパートアングラーの神坂さんよりも多い釣果で、その聞き上げ誘いは岩洞湖でも十分な釣果を叩き出すことが証明された。
昨シーズンは暖冬の影響により、非常に短い期間で氷上釣りがクローズとなったが、今シーズンは雪も多く気温も低いので、例年通りの長い期間楽しめそう。是非1丁聞き上げスタイルを実践してみてはいかがでしょう。