【連載】ディープマスター釣魚録WEB #3福島・小名浜沖のアブラボウズ

福島/岡本光央

今回は本連載久々となる本格ディープゾーンでの実釣編。深海釣り最大級のターゲット、アブラボウズに福島県小名浜沖で挑む。

アブラボウズという魚

深海釣り最大級ターゲットの一つ、アブラボウズは国内では北海道~熊野灘(紀伊)の太平洋沿岸と津軽海峡(北海道・青森県)に分布するスズキ目ギンダラ科の巨魚で、東北では沖アイナメまたは沖アブラメの地方名もある。大型は100kgを超し、水圧変化に対応し水深1,000mから釣り上げても海面に腹を返すことはない。

東北では三陸沖のメヌケ釣りのゲストフィッシュ的な色合いが濃い魚だが、今回紹介する小名浜沖は国内でも数少ない専門で狙う乗合船が操業するA級ポイントである。身肉には脂肪分を50%(普通の魚の10倍!)も含有し胃腸の弱い人が一時に大量に食すとお腹が緩くなる可能性もあるが、本種の脂肪は食用に適したグリセライド。含有する脂肪が人体で消化吸収できないワックスで「毒魚」として扱われるバラムツやアブラソコムツとは全く異なり、市場で普通に流通している食用魚である。

近年は認知度も上がり市場でも以前よりも高値で取引、10kg前後が最も高値で浜値が1kg当たり千数百円。数十kgからの大型は扱い難さもありkg単価は下がるが、それでも800~千円近くを付ける。

タックルと仕掛け紹介

そんなアブラボウズと対峙するには相応の道具立てが必要不可欠。ここでは筆者使用のタックル&仕掛けを紹介する。

タックルはベニアコウ(コウジンメヌケ)、アブラボウズ用に開発した「ディープオデッセイBGX-R」と24Vモデル「CZ-9キンメSPECIAL」をセレクト
ハピソンのリチウムイオンバッテリーを2台連結し24V電源に

【ロッド】2kg以上の大型オモリ+ギミック類使用でも的確に底を叩きベイトを躍らせられるアクション、スムーズに食い込ませるトップと巨大アブラボウズのパワー&重量にヘタらないバットパワーを兼ね備えたオモリ負荷350~600号表示の2m程度。ヘビータックルアコウ・ベニアコウ対応の深海専用モデルがベストマッチ。筆者のセレクトはアルファタックル「ディープオデッセイBGXモデルR」。

【リール】高強度PE10~12号1,000m以上のキャパシティを持つ大型電動リール。ミヤエポックのコマンドZ9~15番の24Vモデルが主流。今回は「コマンドZ-9キンメSPECIAL」を使用。

【バッテリー】基本各自持参。24Vリールにはハピソンリチウムイオンバッテリー101を2台、若しくは101と100をミヤエポックの「直列コード50㎝」で連結して使用する。

【仕掛け】別図の胴突2本バリ。ハリス30号1.5m、幹糸50号4m、捨て糸は16号1,5~2m。空鈎は「鋼タルメ」26~28号、深海バケは「フジッシャー毛鈎ムツ28号」。オモリは根掛りし難く海底に残っても環境に優しい鉄製の「ワンダーⅠ」2~2.5kgを釣り場・潮流により使い分ける。仕掛上端には「ヨリトリダブルベアリング」など大型ヨリトリ器具を配す。

オモリは鉄製の「ワンダーI」。潮流により2~2.5kgを使い分ける
ツケエサはイカ一杯掛けを基本に身エサの併用もあり

【エサ】中型スルメイカ・ヤリイカの1杯掛け、サンマ半身やサバのビック短冊など。イカが小振りの場合は身エサとの併用も有効。

【集魚ギミック】発光体は極めて有効。水中灯は「フラッシュカプセルLED-DX夜光」。空鈎には「パニックベイトアコウL」を配し、「マシュマロボールL」は2個で使用しタコベイト、深海バケのカラーとリンクさせる。全鈎に一粒刺し通す「激臭匂い玉13Φ」はイカゴロテイストがお勧め。

針に刺し通す「激臭匂い玉」はイカゴロテイストの13mm
大型のヨリトリ器具とフラッシュカプセルも必需品

【サメ被害軽減装置「海園」】2010年9月の同沖釣行の際、同乗者の40㎏級が取込直前に巨大なサメに襲われ、一噛みで後半身消失のショッキングな場面に遭遇。当時「海園」があればこの被害を回避できた可能性は極めて大きい。中~上層で起きるサメ禍(奪い食い)対策として巻き上げ開始時に「海園Ver.3」のカラビナをミチ糸にセット(引っ掛け)し海中に投下する。

7月24日の釣行から

現在、東北海域のアブラボウズ専門乗合船は福島県小名浜沖を釣る2件の船宿のみ。今回釣行は筆者常宿で本連載でもお馴みの福島と茨城の県境の港、北茨城平潟港「第15隆栄丸」。

現在はヒラメやタチウオ、ヤリイカ、タコ、アカムツ…と季節毎の釣り物を幅広くカバーするが、船宿のルーツはメヌケやマダラなどの深海釣り。従来ゲストフィッシュのポジションだったアブラボウズの乗合船を確立したフロンティアでもある。

釣行会を行った7月24日は平日ながら限定出船のアブラボウズ乗合は定員12名の満員御礼。筆者はTEAMメンバー3名と乗船、船宿女将の指示で左舷に4人が並び、自身は大艫に陣取る。

酷暑を踏まえ早出早上がりのこの日は午前4時15分スタート。メインポイントに漁師の延縄が入ってしまい、「小型主体だが数が出る」500m以浅のやや浅みにアプローチ。着底後20分以上の静寂に少々焦れて来た所で待望の魚信が出る…が、一気に持ち込もうとしない。小振りと見て十分食い込ませ一際大きく持ち込んだところで巻き上げスイッチON。

1投目から本命で幸先良し!

確実に針掛りしたがサイズは見立て通り、それでも結構な抵抗を見せて海面に現れた12kg。ギャフを打ち込み「ボウズを獲ってボウズなし」と安堵する。同乗者の多くがアタリを捉えたが針掛りに至らずやバラシも目立つ。初挑戦のメンバー鈴木奈々さんは筆者と同級に破顔一笑。

2投目も同様のアタリで上針の紫フジッシャーに調理するにも食べるにもベストサイズの9kg。右舷では良型バラメヌケに歓声が上がる。同所に混棲するバラメヌケは3kg以上の大型揃い。できるなら土産&画面の賑やかしに1匹釣り上げたいところだ。

上針のフジッシャーに小振りのスルメイカとサンマの半身をダブル掛けし、メヌケに色気満々で投入した3投目。これまでより小さめのアタリの後、いつまで待っても突っ込みが来ない。エサを盗られたのか、それとも…。

巻き始めるとそれなりの負荷に膨らむ期待感。終盤はラインが沖目に走り、程なく見事な緋花が海面に弾ける。思惑通りのバラメヌケはボディーに墨を付けた62cm/4kg。自己記録更新のビッグワンに口元が緩む。

記録更新の4kgバラメヌケに破顔一笑

「もう1匹釣ったら終わろう」と決めた4投目はメヌケらしきにエサだけ盗られるも、続く5投目は7時30分過ぎに「これぞアブラボウズ」のビッグヒット。アタリと抵抗具合から30kg級と見立てたが…スリリングなファイトの後に海面下に現れたのは灰色の魚影2つ。上針のフジッシャーに当日最大となる20kg、下針のパニックベイトに10kg。予想外の「ダブルボウズ」に「重さの見立ては合ってたけどね」と微苦笑しつつ、目標を達成し公約通り!?早々に納竿し観戦に回る。

ダブルボウズ達成で早々に納竿
船中最大の20kgで有終の美

この流し同行の相川君もアブラボウズとメヌケのダブル。この後9時30分まで流したが、6投目以降は船中喰い渋り、ラストはメンバー下大川さんの9kg1匹のみ。

結果筆者が9~20kgアブラボウズ4本と4kgバラメヌケで竿頭&船中最大のダブルクラウン、同行の3人も9~12kgを各3本と土産を確保し皆が笑顔で帰路に就く。

↑同行メンバーも10kg前後を3本ずつキャッチし納得の釣行に(左より下大川、相川、鈴木の各氏)

アブラボウズ自体は周年釣れる魚だが、小名浜沖へのアプローチは海況の良い時期に限られるため、例年梅雨時から夏場がメインシーズン。出船は不定期となるため船宿HPの「カレンダー」を参照頂きたい。

アブラボウズ料理

生食は醤油と味醂1対1の漬けタレや酢を使い脂肪をある程度緩和することで、より食べやすく旨味も引き立つ。「ヅケ」を辛子で握る島鮨風、酢飯に乗せた漬け丼が美味。加熱調理はギンダラに準じ、焼き物は西京漬け、塩麴漬け、粕漬、照り焼きなど。煮付けは脂肪分に弾かれない濃い目の汁で煮上げるのがお勧めだ。

船宿情報

第十五隆栄丸(茨城県平潟港)

第15隆栄丸
鈴木和次船長


TEL 0293-46-3980
アブラボウズ乗合 ¥25,000~¥30,000氷付
※釣り場により料金変動。不定期出船のため船宿HPを要確認。
※8月現在乗合メインは小名浜沖の大型ヒラメ。

WRITER

岡本光央

アルファタックル、ミヤエポック、フジワラ、ヤマシタ、ゴーセン、KINRYU、ルミカ、藤井商会、NIKKOフィールドスタッフ

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深海釣りの第一人者。埼玉県川口市在住のフィッシングライター。著書、番組出演など多数。釣り東北本誌にて長年「ディープマスター釣魚録」を連載。

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