「佐藤文紀 米代鱒釣行・後編(2~4日目)」~定点の釣りからラン&ガンへのスイッチ~

釣り人:佐藤文紀(シマノモニター)

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〇これぞサクラマス。1日1回あるかどうかのチャンス

 1日目、幸先良くスプーニングでの定点の釣りで貴重な1本をキャッチした佐藤氏。その勢いを持って、2日目以降はミノーイングをメインに釣りを組み立てたが、高気温により濁りがきつい雪代が流入したことで、2日目はノーバイト、ノーチェイスの完敗をくらい、さらにその夜の雨によって3日目はさらに濁りが酷くなるという追い打ちをかけられ、1日目にはっきりと見えたサクラマスの背中をもはや完全に見失ってしまった…。

そんな中、活路を見出したのは支流の合流付近。米代川は、早口川、阿仁川、藤琴川などの大小様々な多くの支流を抱えている。これらは雨量やダムの放水加減にもよるが、基本的には本流より濁りが取れるのが早く、特に合流付近は比較的水がクリアなことが多い。

支流の藤琴川は、解禁直後は強烈な濁りで本流も濁らせていたが、2週目あたりからはクリアとなり、逆に本流の濁りを緩和していた

この特性を踏まえ、3日目は藤琴川合流点を狙い雨が弱まった午前10時頃からスタート。しかし、ヤマメのチェイスが数回あっただけでサクラマスの反応はなかった。他の場所は濁りが増すばかりであちこち奔走。ラストポイントとして、もう1度釣りを組み立て直そうと1日目に釣れたポイントに戻った。しかし、時間だけが過ぎ、気づけば午後5時を告げる町内チャイムが流れてきた…。普段なら夕まづめのチャンスコールに聴こえるが、ここまでの厳しい状況と雨降りの沈んだ景色に、どこかもの悲しく聴こえる。

と、その時だった。ピックアップ寸前のミディアムディープ系ミノーに、突然サクラマスがチェイスし、勢い余って水面を割った! 「追ってきた!」 丸2日振りとなるサクラマスからの反応に、思わず体全身がビクッとなるほどの驚き。しかし、その後ディープダイバーにルアーチェンジするも再アタックはなく3日目終了となった。

サクラマスの姿がはっきり見えた。悠に65cmはあった

○わずか2投で…これもサクラマス

 最終4日目。前日に藤琴川合流付近でサクラマスの河川残留型であるヤマメがチェイスしてきたことから水の状態が良いと判断。また、同所は大きな瀬の上流、いわゆる瀬肩にあたり、夜に瀬を越えたサクラマスが朝一に着いていることを期待して同所にエントリーすることにした。

薄暗い中、駐車場で準備していると、先行者が60cmを超える良型のサクラマスを持って車に戻ってきた。話を聞くと、わずか3投でヒットしたという。こちらも期待感を持ってスタートすることができたが、群れは薄いのか、朝の好時間は周りに居た人も含めて同所ではその1本のみ。しかし、ポイントの見立てが間違っていなかったこと、そして前日のチェイスもあったことで、再びサクラマスの背中が見え始めた。

藤琴川合流のやや下流のポイント。瀬肩で、夜のうちに瀬を越えたやる気のあるサクラマスが一時的に休む

その後、一度休憩。前夜から気温が下がったことで、上流では雪代が落ち着き、おそらく時間差で午後からは濁りも緩和すると共に、減水してここ数日入ることができなかったポイントにもエントリーできるはず。それまで体力を温存することにした。

そして、満を持して午後3時、二ツ井エリアのトロ瀬にエントリー。まさに今釣行のオールラスト。感動のドラマはあるのか、それとも…そんな思いを抱きながら再開。状況は上向いているとはいえ、ここまでの展開からすれば苦戦は必至だろうが、100m程続くトロ瀬を流していけばどこかで1チャンスはあるはず…。が、これもサクラマス。図らずもエントリーしてわずか2投でいきなりヒット! 途中、ストラクチャーにスタックしながらもピンク紫が美しいサクラマスを無事にキャッチ。その興奮のファイト、感動のフィナーレは是非動画をご覧頂きたい。

〇釣行を振り返って…「定点の釣りかラン&ガンか」

同じ場所で粘るべきか、それとも移動するべきか…サクラマス釣りの悩みどころともいえる、いわゆる「ポイントの見切り」。状況次第といってしまえばそれまでだが、佐藤氏の場合は1つ「サクラマスの活性」で判断している。つまり、濁り、水温、天候(気圧)などの水況によって川全体のサクラマスが低活性となり、ストラクチャーに張り付いて殆ど動かないような状況の場合は、着いているのが明らかな場所で「定点の釣り」を行う。釣り方もボトムを意識し、スプーンのような縦フォール、あるいはリップが大きいディープダイバーのような止めていても流れによって動かせる、横の移動距離を抑えた「定点アピール」が可能なルアーをセレクトする。とはいえ、ある意味ポイント、レンジ、ルアー、釣り方、タイミングなど全てのファクターがピンポイントになるだけに簡単に再現できるわけではないが、初日の1本はまさにこの戦略がハマったといえる。

逆にラン&ガンは、場所によって釣れる、釣れないがはっきりしているような時に行うことが多い。その意味では仲間や釣具店から得られるタイムリーな情報が重要となる。また、本流が濁っているような時は支流の合流点などクリアな場所に、サクラマスが本流の濁りを嫌って差してきている場合もあるので、そのような場所を回り、空いていれば狙ってみる。特に朝一、上手くその場所に入れればヒット率は高い。4日目の朝はこの読みが当たったが、群れの数が少なく先行者の1本のみでチャンスをものにできなかった。

それまで3日間の釣行で、時間や場所による濁りと水位の変化、釣れやすい時間帯、そして手つかずのポイントはどこなのかを把握していた。2日目以降はミノーイングをテーマにする上で、これは非常に大きかった。というのも、濁りが強い中では基本的にサクラマスは深場のボトムに張り付き、なかなかミノーの潜行レンジ内にサクラマスが浮きづらく、ルアーも見えないためボトムからチェイスもしづらい。それが、濁りが取れてくると、サクラマスは深場から瀬に差してくる、あるいは活性が上がり浮いてミノーの射程距離に入ってくる。こうなれば定点の釣りをするよりも、トロ瀬や瀬をラン&ガンしとにかく活性が高いサクラマスを見つけたほうが確率は上がる。この読みが的中し、午後から減水したタイミングで手つかずのポイントにエントリーし、わずか2投でチャンスをものにした。

〇タックル選択

今回佐藤氏は以下の2タックルを使用した。双方のタックルの特徴、強みを把握し、状況に合わせた使い分けも今回の釣果につながったことは間違いない。

【定点の釣り・重量系&ディープ系タックル】
コンセプト:シャロ―系ミノーから、バイブレーション、ディープダイバーミノー、スプーンなどの重量、引き抵抗の重いルアー用の設定。基本的にはルアーをサクラマスに確実に見せて食わせることを重視しただ巻きをメインとする。
ロッド:シマノ「カーディフモンスターリミテッドDP83ML
リール:シマノ「ステラ3000MHG
ライン:シマノ「ハードブル8+」(スティールグレイ)1号
リーダー:ナイロン20Lb
ルアー:スプーン、ディープダイバー/シマノ「カーディフフリューゲル99F DRフラッシュブースト」、バイブレーション/シマノ「エクスセンス サルベージ70ES

【ラン&ガンの釣り・瀬撃ち系タックル】
コンセプト:瀬、トロ瀬でのミノーイングをメインとしたタックル設定。トゥイッチアクションによりミノーを平打ち、またはイレギュラーアクションでスイッチを入れる。
ロッド:シマノ「カーディフモンスターリミテッドTW83ML
リール:シマノ「ステラ3000MHG
ライン:シマノ「ピットブル8」(ライムグリーン)1号
リーダー:ナイロン20Lb
メインルアー:シャロ―ミノー/シマノ「カーディフMLバレット93F ジェットブースト」、ミディアムディープミノー、シンキングミノー/シマノ「スコーピオンジャーク90Sジェットブースト

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釣り東北WEB編集部

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「釣り東北WEB」の運営、取材、撮影、編集、映像制作をメインに行う。他、ワカサギの穴、トラウトステージといった東北で人気ジャンルの別冊を刊行。

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