秋田のキス釣り聖地
秋田県三種町にある釜谷浜は、15年程前までは釣り人も少なく、ひっそりとした海水浴場だった。ところが、風力発電の風車の設置が進み、海と男鹿半島とズラリと並ぶ風車のコントラストが絶妙で、徐々に人気の観光スポットに変貌した。
また、釣りでは2008年にダイワ「スーパーバトルカップ投げ」の予選会場に選定されて以来、シロギスの魚影の濃さと海水浴場の駐車場、トイレなどの設備があることも後押しとなって、秋田県のキス釣りの聖地とも呼べる絶好の釣り場となった。
今ではハイシーズンになると、キスの投げ釣りのみならず、ヒラメ&マゴチのフラットフィッシュ、イナダやサゴシなどの青物、そしてシーバスやマダイなどをターゲットとしたルアー釣りでも賑わいを見せている。
思わぬ低水温
ここ数年の釜谷浜では、ゴールデンウィーク中にキスが釣れ始める傾向が続いていたが、今年は4月中旬から全く生体反応がない状態が続いていた。この要因は3月になって寒の戻りがあって、一旦雪解けが進んでいた山間部に雪が積もり、その雪解け水に加え田植えの代掻き水も加わったことが大きい。そのため、5月に入っても水温が上昇しない状況が続いていると推測される。
そんな中で、1日も早く「初キス」のアタリを久々に味わいたいと願う、投げ釣りクラブ「秋田投魂会」のメンバーが、令和6年5月19日、釜谷浜に集結し半信半疑ながらも各々の想いを込めてキャストした。
First Kisuは1投目!
午前8時、思い思いの場所に釣り座を構えたメンバーは、やや強めの南風の中でキャストをスタート。使用したエサはキスの食いが良いジャリメ。アオイソメでも釣れないことはないが、ジャリメは細身で針付けしやすく、また、アオイソメよりも空中で受ける空気抵抗が少ないことから、仕掛け絡みのトラブルを起こしにくいメリットがある。
そして全員がキャストして、ジックリとサビキ始めていると、間もなく「アタった!」という声がき響く。
最初のキスを仕留めた大原氏によると、距離は2色(1色=25m)、サイズこそ13cm程度の小型だが、アタリは明確に捕らえられ、新調した竿に魂が入ったとご満悦。
そこからは続々と初キスを釣り上げるシーンが繰り広げられた。
流れ藻に苦戦…
好調なスタートを切ったメンバー達だったが、波打ち際に打ち上げられた藻を見ても分かるように、仕掛けを回収する毎に、針、天便、ラインに絡まる藻が厄介な存在だった。
この藻に苦戦したのは高橋氏。仕掛けを止めて藻が絡むのを避ける工夫を行っていたが、その仕掛けを止めた間にフグがエサに食い付くパターンが多発。なかなか本命にエサを届けることができなかった。
距離さえ把握できれば釣れる!
流れ藻の影響だけでなく、まだキスの魚影が薄いのか、キスが1匹釣れても同じ場所では釣れ続かない…。
そこでアタリが出る距離2色付近に狙いを絞り、数投したら場所を移動する「キスは足で釣れ」の基本に徹していたのが片岡氏だった。
今後の釜谷浜に期待!
結局この日は片岡氏の7匹が最高匹数だった。その他では3名が6匹と、キスの群れが殆どなく単発が多い条件だった中で、釜谷浜での「初キス」を手にした際のメンバー達の笑い声は絶えなかった。
渋い状況でも繊細なアタリをキャッチした瞬間の感覚。そしてバラさずに無事に釣り上げた時の嬉しい感情は、キスのサイズとは関係なく、何とも言えない達成感に包まれていた。
4週間後の6月15日(土)には、ダイワ「キスマスターズ」秋田大会が釜谷浜で開催される。その頃には海水温も上昇し、キスの活性も高まり数も型も恵まれる予感がする。
また、近年では遠投するよりも1~2色の近距離をキスの群れが移動しているケースが増えているため、ルアーロッドによるチョイ投げでも十分に釣果の期待が持てる。
5〜6月は暑過ぎず寒くもなく、絶好のキス釣りシーズンを迎えることから、ファミリーフィッシングやアウトドアスタイルの皆さんも、サーフでキス釣りに興じてみてはいかがだろうか?
キスの強烈なアタリに魅了され、クセになってしまう人が続出することを約束しよう!