津軽海峡沿岸投げポイントの特徴
下北半島の北側にあたる津軽海峡沿岸部には、投げ釣りが可能なポイントが数多く存在する。各港湾は勿論のこと、サーフも各所に存在することから海底は砂地がベースになっている。その証拠として、大畑~尻屋にかけての船釣りでは、カレイの好ポイントとなって人気を博しているが、そのサーフから投げ釣りに興じている人が居るとの情報は入手できなかった。
今から20年近く前のこと、編集部は東通村の「野牛漁港」防波堤先端付近から投げて、シロギス、ホウボウなどの南方系の魚を釣り上げた実績があった。近年の野牛漁港と言えば、サクラマスジギングのベースキャンプ的な存在となっているが、現在その防波堤は工事が進められており釣りができる状況にない。また、外洋側にはテトラがビッシリと入れられ、たとえ投げられたとしても仕掛けを回収するのが困難な状態になっていることだろう。
東日本大震災以降この港湾や防波堤の頑丈化傾向は津軽海峡側の各港湾に共通し、防波堤の外側を補強して高波が超えないレベルの高さに変更したり、消波テトラを隙間なく積み上げたりしている。そもそも下北半島の津軽海峡側は、真冬になると北~西からの風をダイレクトに受けるエリアだけに、地震による津波以外にも大シケ対策として欠かせないものだと思われる。
以上のことから通常の投げ釣りで重要視される、防波堤先端などから外海側へのキャストが難しくなってきているのが現実だ。今回の取材初日は強烈な西風が吹き付け、とても竿を出せる天候ではなかった。その点をご留意頂き、釣行検討の材料としてお読み頂きたい。
材木漁港(大間町)
佐井村との境界近くにある漁港で、海に向かって左側に大きな防波堤がある。かつては足場の低い防波堤で釣りやすかったが、外側にコンクリートの高い「壁」が作られて大きな変貌を遂げた。
材木漁港の特徴
防波堤の外海側にはカーブ付近を除いてテトラが入っていない。そのため仕掛けを回収しやすい絶好のポイントとなっている。外海側ではカレイ、アイナメ、ソイ類が狙えるが、春シーズンはホッケの実績も高い。
【高い足場】前述のように材木漁港の防波堤はとても高く、良型が掛かった場合は長いタモの柄が必要となってくる。また、万が一の落下は命取りとなる危険性もあることから、慣れたベテラン向きのポイントだと思われる。
大間港
本州最北端の大間崎から少し南側に位置する大規模な港が大間港だ。その港内に北から「高磯崎」「細間崎」「フェリーターミナル」という3つの防波堤が伸びており、次の防波堤が投げ釣りをしやすい場所となっている。
【細間崎】大間港の真ん中にある短い防波堤で、外側にある防波堤が波を緩和してくれるため足場も低くなっている。防波堤に入るためには車で狭い道を通る必要があるが、地元住民に迷惑を掛けないためにも、挨拶して駐車可能な場所を確認することをオススメする。
取材当日は先端付近の足下に多くのヒトデが落ちて干乾びていた。恐らく投げ釣りなどで針掛かりしたヒトデを外したのだろうが、その場に放置せずに海に戻す心の余裕を持ちたいものだ。
【フェリーターミナル】大間港の一番南側にある長い防波堤が釣り場となるが、取材当日は先端方面の工事を行っており、重機が入って投げ釣りができる状況とは見えなかった。釣行の際は現地の工事関係者などに、釣りをしても大丈夫かどうかの確認をする必要がある。
【大間港のターゲット】投げ釣りではアイナメ、カレイ類、ソイ類がメインの釣り物となる。また、春はウミタナゴ、ホッケのウキ釣り、夏~秋はイカ類や青物が回遊するため、エギングやショアジギングなど、投げ釣り以外でも楽しめるポイントだ。
フィッシングささや
他にも大間周辺には、「佐井(さい)漁港」「奥戸(おこっぺ)漁港」「下手浜漁港」などの漁港もあるが、先端までテトラが積み上げられている防波堤が多く、あまり投げ釣りには向いていない。しかし、ルアー釣りなど他の予備タックルを準備しておけば、港内の岸壁などで別の釣りを楽しむことができる。
奥戸漁港の近くには「フィッシングささや」があり、一通りのタックル、仕掛け、エサ、ルアー、エギ、消耗品なども販売されているので、大間方面に釣行した際は足を運んでみたい。
〒039-4602
青森県下北郡大間町大字奥戸字向町27-5 TEL:0175-37-3300
大畑(おおはた)漁港
むつ市中心部から車で20分程度で到着するのが大畑漁港。大畑漁港は横に長い漁港だが、最も長い防波堤の外側にはビッシリとテトラが入り、投げ釣りには適していない。投げ釣りを楽しめるのは東端と西端にある防波堤の先端付近となる。
【大畑漁港の注意事項】下北半島の津軽海峡側の地形と位置関係を見れば分かりやすいが、大畑漁港は比較的西風に強く風裏になりやすい。一方、北方向の風が入ると逃げ場がなく、あらゆる釣りがしにくくなるポイントでもある。また、東端の防波堤先端はかつて場所取り争いが発生したこともある程の人気スポットだが、釣り人同士のトラブルにならないように注意したい。
岩屋(いわや)漁港
春シーズンは岩屋沖~野牛沖で船のカレイ釣りが盛んとなっている。しかも沿岸から近いポイントで、マコガレイやナメタガレイ(標準和名:ババガレイ)などの良型が釣れており、実績も人気も高いエリアだ。
岩屋漁港の釣り座は長い防波堤の先端付近となるが、その先端以外は外海側にテトラが入っていて投げ釣りには不向きとなっている。
先端部には落下防止の柵が設置されており。多人数が入れるスペースはない。その先端の正面には短い沖堤防があり、その間の航路にあるカケ上がりへのチョイ投げや、外海側への遠投が狙い目となる。ターゲットはカレイ類、アイナメ、ソイ類が中心となる。
【岩屋漁港の特徴】投げ釣りをするには釣り座が狭く、なおかつ風の影響も受けやすい場所だけに、天気予報の風向は絶対にチェックしておきたい。
尻屋崎に向かうバイパスが旧道よりも高い標高を通るため、漁港周辺は車の通行量も激減し、町並みはひっそりとしている。釣行する際は駐車場所に配慮し、漁業関係者や地元住民の邪魔にならないようにしなければならない。また、漁港の背後は切り立った崖のようになっており、声や音が反響しやすくなっていることから、夜釣りなどの際は物音を立てないよう細心の注意が必要だ。
尻屋岬港(無尻)
この港は日鉄鉱業(株)の作業が行われている工業港だ。取材当日は岸壁で発電用風車関係の資材が置かれ、大型船が係留されていた。
釣りができるのは岸壁から尻屋崎方向に延びる防波堤のみとなるが、釣りをする場合は船舶や大型車両の出入りがないかなどと合わせ、現場の工事関係者に釣りをしても良いかの確認を取ることが欠かせない。
【尻屋岬港の特徴】沖堤防の外側では船やマイボートでカレイ類が良く釣れている。岸壁周辺からの投げ釣りであれば、エサが届く距離にカレイが存在すると思われる。
しかし、今回の実釣取材では、防波堤から投げる度に海藻が針に絡む状況で、投げ釣りではかなり厳しいランクになるかもしれない。詳細は次回の「下北半島投げ歩き Part Ⅳ」でお伝えするので参考にして頂きたい。
尻労(しつかり)漁港
尻屋岬港と尻屋崎を挟んだ反対の太平洋側に位置しているのが尻労漁港だ。漁港の外海側には高い防波堤とテトラが並べられており、東風の場合は波が押し寄せる可能性が高い漁港だ。
【尻労漁港の特徴】ここの海底には岩盤や沈みテトラがあり、投げ釣りでは根掛かりの覚悟が必要となる。狙えるターゲットは、根周りで良く釣れるアイナメ、ナメタガレイ(標準和名:ババガレイ)、ソイ類となる。仕掛けはカレイ仕掛けのような吹き流しタイプではなく、オモリが下になる胴突きタイプがオススメ。足下は根掛かりする可能性が非常に高いため、できるだけ遠投して仕掛けを落ち着かせ、あまり動かさないよにすると良い。
【尻労漁港の注意事項】ここは干満による潮位の差が大きく、大潮の満潮時には波が防波堤先端に這い上がる危険性が高くなる。さらに東風が吹き付けると同様の現象が発生しやすくなるため、釣行計画を立てる際は潮汐表と天気予報をシッカリと確認することが必要だ。
下北半島津軽海峡側の共通点
今回お届けした各釣り場に共通するチェックポイントは、「風向き」「高波」である。尻屋崎灯台付近に足を延ばしてみたが、気温は10度以上を記録しているのに北西風が強烈で、体感温度は氷点下のような感覚に陥った。
津軽海峡が風のトンネルのような役割を果たすため、天気予報で事前にチェックしていたよりも風のパワーを肌で感じ取った。投げ釣りのみならず、あらゆる釣りで風向きは重要。この下北半島では途中から風向きが変わってしまい、全く釣りにならないケースも発生しやすいことを頭に入れて釣行計画を立てよう。
今後も乞うご期待!
これまで2回にわたり、青森県下北半島のおおまかな投げ釣りスポットを紹介してきた。まだまだ紹介し切れない数の漁港やポイントが存在し、今後また訪れる機会があれば開拓を兼ねて竿を出してみたい。
また、釣果のみならず実釣したからこそ分かる、もっと深堀した情報、ポイントの状況、特徴、リスクなどを、釣り人であれば知りたいと思うのは当然のこと。特に初めて訪れるオカッパリの釣り場に関する情報は何よりも重要。釣り人に頼りにして頂ける良き情報提供者と協力者となれるよう、実釣を交えた取材を重ねて参る所存なので、今後も乞うご期待下さい!
今回の実釣レポート「下北半島投げ歩き Part Ⅳ」も近日公開!