【追波川・旧北上川】来るサクラマスハイシーズン戦略!#2 確実に獲るためのライン戦略

文/佐藤文紀、写真/編集部

1月1日に全国最速で解禁を迎えた宮城県・追波川、旧北上川。記録的な暖冬の影響か流れも乏しく、3月下旬現在までの状況としては芳しくない。それでもタイミング次第ではまとまった釣果も見込めるため、水温、気温が上がる4月のハイシーズンに期待したい。来るハイシーズンで釣果を得るためにも、まずは相手(川)の特性や今置かれている状況を把握しておきたい。そこで地元石巻在住のプロアングラー・佐藤文紀さんに両河川の特性、そして釣果へ近づくための釣り方・ライン選択を解説して頂いた。後編の今回は実釣におけるPEラインの有用性、そしてフロロカーボンラインの号数選択の目安など、「確実に獲るためのライン戦略」を紹介したい。

前回の記事【追波川・旧北上川】来るサクラマスハイシーズン戦略!#相手の土俵を知るべし!

2024年は元旦からサクラマス解禁

昨年までしばらくの間、1月20日が追波川、旧北上川のサクラマス釣り解禁日で、それでも降海遡上型サクラマス釣りの解禁日としては近年まで全国最速解禁河川でもあったのが、今年2024年は追波川も旧北上川ともに1月1日の元旦から解禁となり、かつての時代の解禁日に戻った形となった。当初は期待した釣果だが、元旦からの釣果は聞かれず、1月末になって追波川ではようやくポツポツと釣果が上がりだし、旧北上川における1月の釣果の声は聞かれずに過ぎた。

追波川のサクラマス釣り場を象徴するランドマーク「北上大堰」。赤色の巨大水門が目印だ
今回、釣り場に持ち込んだルアーたち。主力のスプーンは18g・20g・24g。この他にスプーンジグ・メタルジグ・プレートジグ・ジグミノーも収納している。ミノーはサクラマス用シャローミノー・ミディアムディープ、ミディアムディーププラス・ディープダイバーといったフローティングミノーのほかに、強波動系バタバタアクションのシンキングミノーも重さ違い・トレースレンジの違いで携行する。プラグのフックは、バラシ対策でいずれもPEライン完全対応STX-38ZNないしSTX-45ZN(カルティバ)に交換している

近年は冬の暖冬や真夏の酷暑といった地球規模での顕著な温暖化の影響と推測されるが北上川水系のサクラマスは2020年を境に全体的に遡上開始時期が早まっている傾向がある。特に2020年~2023年までの4年間はことにそうで、釣れ始まるのが早くなった代わりに釣れ終わるのも早くなったのを実感している。

事実、シーバスの群れが海から川に入ってくるタイミングが年々早くなっており、4月に入るとサクラマス釣り中にヒットしてくる主にフッコクラスのシーバスのヒット数は年々上昇傾向になってきた。以前は追波川では5月は問題なくサクラマスは釣れ、私自身は過去6月も釣っていた。追波川でのサクラマス最終ヒット記録は今では信じられないかもしれないが15年以上前には7月30日というのが自己最長記録である。

だが、今やそれも昔。シーバスの群れが濃くなってくるとサクラマスの気配は薄くなり、5月の15日前後で水温15~16度に達したのを境にサクラマスとシーバスの勢力図が置き換わるようになってきた。このことから、この4年間はサクラマスシーズンを通じて2つの波形が浮き彫りになっていた。 元来、両河川のうち旧北上川に遡上してくるサクラマスの群れは2月の7~8日頃、遅くても2月の14日くらいまでには数匹の釣果が確認され、その後、いったん小康状態が続き4月になってから数がまとまっている傾向があった。対して追波川の方は不思議と2月は末になるまで釣果は出にくく、3月の春彼岸の頃から釣果がまとまり出し4月はピーク中のピークで最も川の中のサクラマス密度が高まり、5月も6月も釣果は上がっていた。

人造河川である追波川は対岸までの距離がおおよそ平均して250m程。サクラマスロッドでフルキャストしたところで遥か向こうの対岸まではルアーは届かない

日本海側と太平洋側の遡上タイミング

私自身も釣行する秋田県米代川の場合、解禁当初は数こそ少ないがそれでも最上流部まで遡上するような大鱒は解禁初期から上流部でヒットしている傾向は見られ、勿論このことは解禁日が宮城県の1月と秋田県の4月とでは話は異なるという点もあるが、日本海側と太平洋側の河川での対比の点でも実に面白い。

追波川や旧北上川の場合、シーズン初期に釣れるサクラマスは小さめのアベレージサイズが多く、なおかつオスが釣れる比率もシーズン前半は割合として少ない。そしてこの2河川で急にサイズが上がるのは3月の春彼岸を過ぎた頃で、最も多いのは4月。サイズが大きいのは4月中~下旬に集中的に釣れ盛り、オスもその頃から出現率が高まり、5~6月の遅れて入ってくる群れの中にオスが混じっていることが過去多かった。私も北上川水系でオスを釣っているのは4月中旬からで、逆に2月や3月にオスの顔を拝んだことは32年間この川で釣りをしているがこれまでにはない経験だ。

と、いうようにこと大型やオスに関しては最も自身の遡上に適した川の状態になった時に足早に通過するように遡上してくる傾向が追波川・旧北上川の場合には特に顕著に見られる点も他河川との違いとして日々感じている点である。

今年は昨年までの解禁日であった1月20日時点でもまとまった釣果はなかったようで、1月末を境にようやくスロースタートを切った形となっているが、これは単に今年はサクラマスの数が少なくヒットまで遠いということも影響は少なくないように感じている。当地の近海で獲れているサクラマスが殆どおらず、河川内に網を張っている漁師の網にもほぼ掛かっておらず、近郊の石巻魚市場へも今季のサクラマス水揚げは3月中旬時点でわずかに数匹のみ。方向的に追波川・旧北上川へと向かう個体も群れに多く混じっている南三陸・岩手県大船渡沖のマスジギングも3月1日の解禁以降釣果低迷していることから、現状はご当地河川への遡上量が昨年よりもだいぶ少ない状況には見舞われている。今後、4月の最盛期を迎えるがその頃にはいくぶんフィールド状況が改善されていることに期待したい。

サクラマス釣りに求められるPEラインの特性

さて、ここからは私がサクラマス釣りで実践しているラインについての考え方をシェアしたい。

シーズン初期である1月~3月は氷点下や朝の放射冷却で気温が0度を上回らず低温による凍結でPEライン自体が凍り付いてしまい、釣りが著しく阻害されるケースがままある。そんな時期は無理せず凍結に耐性があるナイロンラインのスプールも釣り場へ携行している。事実、真冬にサクラマスの冬季解禁を迎える北海道の洞爺湖(12/1~3/31まで)のランドロック型のサクラマス釣りではPEラインは凍結で使用不能に陥ることから私も地元アングラーもほぼナイロンライン一択である。

北国も3月も中旬になってくると気温も上がってきて、こと緯度的な側面で宮城県下でのサクラマス釣りでも安心してPEラインを繰り出せるくらいの気温になってくる。特に追波川の場合はサクラマスの主たるポイントは川幅250m平均となっており、フルキャストしたところで対岸同士向かい合ってフルキャストしてもルアーが絡み合ってしまうことはない距離だ。ゆえに足下の岸近くばかりでは沖合にできた遥か向こうの流芯をサクラマスが遡上していることもこの川では珍しくはなく、“跳ね”や“もじり”が頻繁に見られる時も実際は25gスプーンの遠投ですら届かない遥か沖だったりする。

PEラインはなによりナイロンラインよりも遥かに飛距離を望める点が魅力だが、同時に延びが少ないPEラインゆえに、用いるロッドの曲がり込みと合わせるショックリーダーの硬さについても日頃から吟味してタックルを組む必要がある。

糸抜けが良く飛距離性能に長けるPEライン。対岸まで平均して250m程ある追波川では飛距離は大きなアドバンテージとなる
追波川流域では蛇篭(石を網で包んだ構造物)が川底に沈められている区間があり、軽く針先が触れただけでも瞬時に根掛かりを招くので執拗なボトムトレースには注意が必要だ。また、写真のように乱杭が伸びている場合もあり、潮位が高く水中の杭を目視できない時間帯にサクラマスを掛けるとファイト中に杭にラインが干渉し根ズレしてしまう恐れもある

シーガー「R18完全シーバスステルスグレー」

自身の本流サクラマス釣りの基本はPE 1号にフロロカーボン製ショックリーダー5号、という組み合わせが多い
“ステルスグレー”の名の通り、ライン自体がカモフラージュ性に優れたアースカラーが特徴だが、愛用リール本体とのカラーリングもマッチする点も気に入っている

取材当日、用いたPEラインはシーガー「R18完全シーバス[ステルスグレー]」1号。ショックリーダーは「シーガーグランドマックスFX」の4号~5号。

4号リーダーは水中に擦れるような障害物が少ないオープンウォーターの場合、5号リーダーは見えない水中に乱杭や流木、波消ブロック、蛇篭のエッジや傾斜のきついブレイクなどに糸が立った状態で擦れたり、あるいは障害物に巻かれたりする可能性がある場合には5号を選んでいる。

R18完全シーバスは原糸にシーガー最上級のリミテッドPEが使われており、1日を通して連投する度重なる長時間キャストへの耐久性が魅力だ。簡単にいえば、弱るのが遅いPEということだ。PEラインは劣化すればライン表面のコーティングがまずは剥がれ落ちていき、その後、表面が毛羽立ってくる。このラインはその毛羽立ちまでの時間が長く稼げる。高い強度を長く維持する耐久性に交換までの巻き替え頻度の低減と強度維持の安心感は得るところが大きい。

他のサクラマス河川では瀬と開きの交互が多いゆえ、ルアーの位置をラインの色を自身の目で偏光グラス超しに追って操作することも多いが、釣り場全体がトロ場である追波川では巻き感度でルアーの位置や情報も補えられるため、水中では水に馴染んで背景に同化するステルスグレーを用いて糸自体の存在感を極力、消すことも意識している。特に水がクリアアップして流れもない時にはこの特性がマッチしてくる。

追波川のような川幅の広い大河では遠投先のピンスポットに何が沈んでいるのかを把握するだけでもヒットへの可能性は高まる。ひと目で投げた距離が分かる視認性に優れたメーターマーキングが施されたこちらは「シーガーPE X8(エックスエイト)」。遠投先のピンスポット狙いでこちらは有利なので、単色で背景色と同化する「シーガーR18完全シーバスステルスグレー」との使い分けが活きる特性のラインだ

耐久性に優れたPEラインにさっとひと吹きするだけで更にライン寿命を延ばせるとしたら…使わない手はないのではないだろう。カルティバ「撃投ディスタンススプレー」をPEライン表面に吹いてコーティングを強化する

ソフトフロロという選択肢

リーダーにはシーガーフロロカーボン最上位品質のグランドマックスのうち、強度は同じながら通常のグランドマックスよりもソフトに仕上げられた「グランドマックスFX」を愛用。シーガーのフロロカーボンライン全体にも言えることだがシーガーのフロロカーボンは極めて糸自体に濁りがなく透き通るようにクリアだ。おまけに屈折率の関係でフロロカーボンはナイロン以上に水中では糸自体が目立ちにくいステルス性をも発揮する。

春はやい時期の低水温下での釣りということでフロロカーボンにしてもナイロンにしてもモノフィラメントライン自体も寒さでどうしても硬化しやすい季節だが、フロロカーボン持ち前の芯のある硬さをもってしてもこのグランドマックスFXはソフトフロロであり、軟らかいのに耐摩耗性も極めて高い。糸自体も姉妹品のグランドマックスよりもソフト、とあって寒さで手がかじかみやすい厳寒期の釣り場でもノットの締め込みも容易く、結束も楽で強度も高いことがこのリーダーを千載一遇の出逢いとなるサクラマス釣りには用いている。

特段に目を引くような大型の遡上が少ない1~2月に水がクリアアップして流れがない場合にはリーダー号数は3.5号まで落とす場合もあるが、3月は4号がメイン。中には4.5kg以上のオスが群れに交じって遡上している可能性がある4月の最盛期は大物対策でおのずと5号を選択している。

大鱒と対峙するために

猛烈なパワーファイトを制してランディングに至った追波川でのオスの4.3kg/67cmの板マス。時にはこんな魚やまだ見ぬこれ以上の大物が潜んでいる可能性もあるのが遡上魚相手の釣り。東北随一の大河、北上川水系では基本、PE 1号+フロロ5号リーダーで立ち向かうサクラマス釣りは決してオーバースペックではない(写真提供/佐藤文紀氏)

以前、4月中旬に釣り上げたオスの4.3キロは刺激的なビッグファイトとなり、目で見えない沖に沈んだ流木にリーダーが擦れる瞬間があったのが、リーダー表面には壮絶なファイトで経たスレ傷が入っていたがグランドマックスFXの5号リーダーはその真の役目を発揮してくれたものだった。5号にしていて、本当に良かったと思える忘れがたい1匹だ。

なお、ルアーを意図的にU字効果でターンを切りたい時にはあえて水中での流速抵抗の「受け」をリーダーの線径で狙うため、シーズン問わず最初から5号を用いる場合もある。

北海道のショアの海サクラを含め5号と6号のリーダーの線径の差は大きいな…と過去の経験上は感じているが、一般的に5号リーダーまでであればサクラマスのルアーの食いには極度の差は発生しにくいと少なくとも私は感じている。グランドマックスFXのリーダーは3.5号・4号・5号を、この水系では携行し使い分けているが最も出番が多いのは5号である。 万が一。いざ!というタイミングで大物、特に5kgオーバーの大鱒が自分のルアーに口を使った時を想定してみてほしい。細いリーダーで内心心配しながらのヒヤヒヤのファイトを演じるよりも、堂々と大鱒の引きに立ち向かったほうがその希少なチャンスをモノにできる可能性は高いと考える。過度に号数が細過ぎるリーダーは少なくともこの2水系に関しては、今のところは必要はないと考えている。

川全体が広大なトロ場である追波川でのサクラマス釣りの主戦力はスプーン。写真は私がプロデュースしているサクラマス専用、プロズワン監修「マスケグ桜鱒SP」(ノーザンライツ×プロズワン)20gの新色PO-6。こと追波川・旧北上川・赤川・米代川で高実績を誇る人気スプーンだ。 根がかりが多い場所ではスイミングフックは1本掛け、根がかりの心配が少ない場所では2本向かい合わせで掛ける“天国バリ”仕様にして用いるのが基本
スプーンにセットするフックはスイミングフックを自作するのが通例だ。写真上はストレートポイントのカルティバ「ジガ―ライト早掛#1/0」、写真下はカーブポイントの同「ファイアフック#1/0」の2種を障害物との接触の多さ加減でポイント毎に使い分ける

サクラ咲く春に向けて

取材当日は追波川の有力ポイントで朝から夕方まで竿を出してみたが、私の並びおよび見える範囲の対岸側でもサクラマスのヒットはなかった。釣り座を隣に構えたこのポイントへ足繁く通う常連と思われるアングラーからも「今年の追波川は元気がないですねぇ…」と、ため息とも受け取れる声も聞かれた。前評判通り、今季はまだ本調子ではないようだ。

それでも、私の知る限りそもそもサクラマス釣りとはこんなもの。そういう部分もひっくるめて、私はサクラマスが大好きだ。日ムラは激しいようだが散発的にポツポツとは上がっているようなので、これからのシーズンに期待すると共に、来る4月には私も様々なサクラマス河川へ釣行計画が予定しているが、この川「追波川」は24年前に当時18歳の私が人生で初めてサクラマスを釣った思い出の川でもある。またタイミングを見計らって、今度はじっくりと釣り込んでみたい。これからの最盛期が実に楽しみだ。

取材協力/クレハ合繊(シーガー)

WRITER

佐藤 文紀

プロズワン代表/スポンサー(シマノ・オーナーばり・クレハ合繊・グレンフィールド(ゼクー)・タレックス・リトルプレゼンツ・デプス・ノーザンライツ・メガネ補聴器のセガワ)

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プロアングラー。長年、テレビや雑誌・書籍等で活躍。国内外のロックフィッシュゲーム全般およびサクラマスを筆頭としたネイティブトラウトを専門分野とし、中でもサクラマス歴は32年とロックフィッシュに次ぐ釣り歴で、東北サクラマス河川および北海道のランドロック(湖)~ショアの海サクラと広い経験を持つ。

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