関西テンヤタチウオの名手・吉田昇平氏(シマノフィールドテスター)が、近年巨大タチウオの聖地として全国にその名を轟かせる宮城県・追波湾(おっぱわん)に初挑戦。120cmオーバー、指5本以上が「日常レベル」で釣れるという夢のようなフィールドで、吉田氏はどう攻略するのか。急激な水温低下というタフコンディションの中、炸裂したメソッド「追わせ釣り」の一部始終をお届けする。
巨大タチウオの聖地・宮城追波湾へ
今回、吉田氏が訪れたのは宮城県南三陸町歌津町。お世話になったのは宮城県でタチウオ釣りを確立させた遊漁船・大隆丸(牧野船長)だ。
近年、追波湾は冬場のタチウオフィールドとして急成長しており、特に釣れるサイズが桁外れだと話題になっている。


牧野船長に話を聞くと、「今年はコンスタントに大きいのが釣れている」とのこと。しかも、こちらの基準では120cm以上のいわゆる「ドラゴン」が普通に釣れるというから驚きだ。
「120cm? 大丈夫でしょう」と笑う船長の言葉に、吉田氏も気合十分で出船した。



急激な水温低下…沈黙の海
しかし、自然は甘くなかった。
撮影前日は冷たい北風が吹き荒れ、水温は前日から一気に2度も低下(21度台→19度台)。魚探にはタチウオどころかベイトの反応すら映らない、まさに「無」の状態からのスタートとなってしまった。
吉田氏は、自身が監修したシマノ「サーベルマスター バレットテンヤ 40号」をセットし、得意のジャーク&ステイやバイブレーション釣法で探りを入れるが、期待に反してアタリは遠い。
「大阪湾の釣りが通用するか試したい」と意気込んでいたものの、まずは魚の居場所とご機嫌を伺う我慢の展開が続いた。



状況打開の鍵は「ロッドチェンジ」と「追わせ釣り」
大きなウネリと低活性。この状況を打破するために吉田氏が打った手は「ロッドチェンジ」だった。
当初使用していた硬めの8:2調子のシマノ「サーベルマスター エクスチューン テンヤ 82 H172)」から、より柔軟な6:4調子の「同 64 MH195」へ持ち替えたのだ。
ウネリで船が上下する中、硬い竿ではテンヤが不自然に動き、タチウオに違和感を与えてしまう。柔らかい竿でウネリを吸収し、テンヤを安定させる作戦だ。
すると、これまで沈黙していた海から反応が返ってきた。
ここから吉田氏の真骨頂「追わせ釣り」が展開される。
「追わせ釣り」とは?
- 微細なアタリがあっても即アワセは厳禁。
- アタリがあったら、竿でゆっくりと聞き上げる。
- タチウオがエサを追って上に上がってくる(これが重要)。
- テンヤが立ち、タチウオも噛み直ししながら立った状態になり、フックポイントがタチウオの頬に接近する。
- 焦らされたタチウオがエサに執着し、本気食いした瞬間にフッキング!
- タチウオの頬にフッキングする。




「しっかり追わせて掛けると、いい所にフッキングするしバラシも減る」と吉田氏。
低活性で食いが浅い時こそ、即掛けではなく、タチウオの本能を刺激してスイッチを入れるこのメソッドが効果を発揮する。
この追わせ釣りには「サーベルマスター エクスチューン テンヤ 64 MH195」の柔軟な穂先と6:4の調子がタチウオに違和感を覚えさせにくい何よりの武器となる。
ついに降臨!124cmドラゴン
戦略は見事にハマった。
「追わせ釣り」で活性の低い個体のスイッチを入れ、次々とタチウオをヒットさせていく吉田氏。しかも上がってくるサイズは全てデカい。
そしてロッドを「サーベルマスター SS テンヤ 91MH165」にチェンジし、迎えたクライマックス。
ボトムから60m付近まで広範囲に反応が出始めた時合、強烈な引き込みがロッドを襲う。
電動リールのパワーで巻き上げ、海面に姿を現したのは、文句なしのドラゴン。
計測サイズは124.3cm。指7本クラスの圧巻の魚体だ。
「納得の1本です。追波湾のポテンシャル、凄すぎます」と吉田氏も感無量。その後もドラゴン級を連発し、終わってみれば大満足の釣行となった。
タフな状況でも、タックル選択とアプローチ次第でドラゴンは引き出せる。
東北の熱い冬はまだ終わらない。ぜひ動画でその興奮を体感してほしい。

TACKLE DATA
- ロッド: シマノ サーベルマスター エクスチューン テンヤ [82 H172] / [64 MH195]、サーベルマスター SS テンヤ 91MH165
- リール: シマノ フォースマスター 300DH
- ライン: シマノ タナトル8 1.5号
- リーダー: フロロカーボン 10号
- テンヤ: シマノ サーベルマスター バレットテンヤ 40号 / サーベルマスター 船テンヤ 40号
取材協力:大隆丸(宮城県南三陸町歌津町)


