宮城オフショア・ヒラマサキャスティングゲーム~春のシーズンスタートを見極める~

昨年、ヒラマサキャスティングの未開拓エリア、宮城県の牡鹿半島周辺での実釣で、8kgクラスを筆頭に3本のヒラマサをキャッチし、そのポテンシャル、可能性を実感した椙尾和義氏(バリバスフィールドスタッフ。となれば今年も来ないわけがない! 昨年が晩秋だったことから、新たなデータを収集すべく春シーズンを選び、さらなる期待感を持って臨んだ。

とはいえ、実釣前から1つ心配事があった。それはこれまで東北太平洋側を激変させた黒潮の大蛇行が収束しつつあるということ。これによって福島沖まで寒流親潮が張り出し、水温的にも2~4月は昨年より3~5度以上低い8度台まで落ちた。実際に今年の同エリアはここ数年不調だった冷水を好むカレイやアイナメが復調。これが本来の東北太平洋の姿でもあるのだが、逆に暖流を好むヒラマサにとっては当然不安要素となった。

夕焼けに輝く、宮城、春のヒラマサ

沖を狙うか、近場を狙うか

実釣日は5月21日、22日。船は前回同様、塩竃釜の渕マリーナの翔英丸。メンバーは椙尾さんに加えて、現地のショップ「キャスティング泉バイパス店」スタッフ、鷲尾優樹さんがエントリー。鷲尾さんは、クロマグロなどのキャスティングゲームにのめり込む生粋のオフショアアングラー。ヒラマサにおいては日本海側の酒田沖でのキャスティング、ジギングをメインに釣行しており、塩竃沖ではライトキャスティングで小型を狙ったことはあるが、本格的なスタイルとしては今回初トライとなった。

長年ヒラマサキャスティングに挑み続ける椙尾和義さん
生粋のオフショアアングラー、鷲尾優樹さん
2人で情報を共有しながら、春のヒラマサを追い詰めていく

船長の話では、春シーズンの序盤は水温が上がりやすい近場のほうが有望で、大根と呼ばれる水深5~30mの根周りでは1~2kgクラスの小型ながら実績があるという。沖に出れば出るほど水温は下がってしまうが、沖の深場は未開拓であり、もしかすればとんでもない大型が出る可能性もある。21日は凪に恵まれ、翌22日は風が強めで沖まで行けない可能性があるということで、まずは沖のポイントとして網地島沖まで足を伸ばすこととなった。

1stタックル


椙尾さんが最初にセレクトしたタックルは、根がきつくなく、水深的にも70mと深く、ある程度走らせられる余裕があることから、
ロッド:シマノ「オシアプラッガー ライトコンセプト S83ML」
}リール:シマノ「ステラSW8000HG」
ライン:バリバス「アバニ キャスティングPE SMP[スーパーマックスパワー]」3号
リーダー:バリバス「アバニ ショックリーダー SMP ナイロン」60Lb
と、最もライトな設定からスタート。

椙尾さんのタックル。PEライン3号(アバニ キャスティングPE SMP[スーパーマックスパワー])、5号・6号(アバニ キャスティングPESMP ヒラマサチューン X8)を基準

鷲尾さんは、今回持ち込んだタックルで中間強度のものとして、
ロッド:ソウルズ「PS-O85LN6S」
リール:ダイワ「ソルティガ14000」
ライン:バリバス「アバニ キャスティングPE SMP[スーパーマックスパワー]」5号
リーダー:バリバス「アバニ ショックリーダー SMP ナイロン」100Lb
をセレクトした。

鷲尾さんのタックル。PEライン4号・5号(アバニ キャスティングPE SMP[スーパーマックスパワー])、8号(アバニ キャスティングPESMP ヒラマサチューン X8)を基準
2人ともアバニ キャスティングPE SMP[スーパーマックスパワー]アバニ キャスティングPESMP ヒラマサチューン X8アバニ ショックリーダー SMP ナイロンをメインに使用した
バリバス「スプールケースVAAC-76」が発売。耐衝撃に優れた厚めのネオプレーン素材でスプールを大事に保管できる
号数シールの取付けが可能なスリット完備

ルアーは、椙尾さんはフローティング、シンキングペンシル、鷲尾さんはポッパー、フローティングペンシルをメインに、ロングジャーク、ショートジャークのアクションで絶妙な水面下へのダイブを繰り返し誘い続けた。

春のベイトフィッシュ、ヒラマサのサイズを意識し、比較的小さめの150mm前後をメインとした椙尾さんのルアーセレクト。反応を見ながらフローティングとシンキングを使い分け、完全なトップとサブサーフェイスの2アプローチで迫る

沖は不発。水温の高い近場へ…

ポイント周辺の水温は15度と思ったよりは高かったが、船長によるとヒラマサが水面に出るようになるのは16~17度とのことで若干足りない。また、北東からの冷たい風でよりトップに出づらい状況に思えた。約6時間投げ続けたが、水面を割り心躍るようなシーンは一度もなかった。

ひたすら何度もキャスト、ライン放出を繰り返す…
網地島沖を攻める。ベイトっ気もあり、良さそうだったが、いかんせん水温が低過ぎた。水温が上がったらまたチャレンジしたい場所だ

しかし、鳥山もあって、魚探にもベイトフィッシュ反応が映り、雰囲気はあった中で一度もチェイスすらないということで、これはこれでシーズンや場所の目安となる貴重なデータとなった。

港方向に戻りながら午後3時30分、大根周辺に到着すると、水温は17度とやはり沖よりも高い。夕まづめという好時間帯も重ねたことで、これまでの無反応のイメージをリセットし、新たな期待感を持って臨んだ。

水深5m程度の2個所の根のトップにアプローチできるよう、風と潮の向きを考慮しながら船を流し始める。ヒラマサトップでは、基本的には風下側へ追い風を利用してできるだけ遠くへキャストする。飛距離が出ればそれだけ長く誘え、かつ船の存在による魚へのプレッシャーを緩和できる。

待望のスプラッシ!

浅場も時期尚早なのか、2時間経過するも反応はない。それでも「とにかく船を流している間は投げ続けることがヒットの近道」と椙尾、鷲尾両氏はひたすら投げ続けた。夕凪の言葉通り冷たい風が若干弱まると共に、潮が動き出したのか、2人は程良い引き抵抗を感じていた。

そしてついに終了間際、鷲尾さんが操るルアー、フローティングペンシルのソウルズ「デビルワン」にヒラマサがアタック! タックルは今回用意した中で一番ライトなPE4号基準。145mm、48gのフローティングペンシルを強めのロングジャークでアクションさせ、回収まであと15mの所で水面がスプラッシュした。

「ヒット!」

待ちに待ったヒットに船上が沸き立つ。そしてヒラマサの鋭い引きをいなし、無事にランディング。今回狙っているような大型サイズではなかったが、おそらく同県内のオフショアトップゲームにおいてシーズン初の1本であり、時期、状況を考えればその価値は高かった。

何かが起こりそうな夕まづめの好時間帯

翌22日。前日と風の状況を踏まえ、沖のポイントは外し、近場の大根周辺、そしてさらに岸寄りの七ヶ浜エリアでサイズアップを狙った。早々に椙尾さんが3~4匹チェイスしてきたのを確認し、さらに期待が高まったが、その後1度トップに出た程度でノーキャッチ。

昨年のようにはいかなかったが、今時期の沖の状況、シーズンの境目、新たなポイント・大根のヒットパターンなど次につながる貴重なデータを肌でインプット。宮城エリアで10kg、20kgオーバーをキャッチするイメージをさらに強めたメンバーであった。

簡単にいかないからこそ「真の価値」を知ることができる。
夢のサイズを求めて、メンバーのチャレンジは続く…。

ついにヒット! 船上が沸く!
鷲尾さんがヒラマサをキャッチ!
小型ではあったが、さらに宮城ヒラマサとの距離を詰めることができたことは間違いない

【取材協力:翔英丸TEL090-5189-7243

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釣り東北WEB編集部

株式会社釣り東北社

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「釣り東北WEB」の運営、取材、撮影、編集、映像制作をメインに行う。他、ワカサギの穴、トラウトステージといった東北で人気ジャンルの別冊を刊行。

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