神奈川/編集部
コロナウイルスが5類に移行されてから初となる「釣りフェスティバル2024 in Yokohama」が令和6年1月19~21日までの3日間、神奈川県にあるパシフィコ横浜展示ホールにて開催された。初日の19日、現在釣り業界に限らずいろいろ問題となっているネオニコチノイド等の農薬による影響で減少している淡水魚や昆虫について、(公財)日本釣振興会環境委員会主催で4人の講師を招き、環境委員会シンポジウム「淡水魚はなぜ減ったか?」と題した講演会が行われた。
各分野の専門家が分析結果説明
開催に先駆け主催者である(公財)日本釣振興会環境委員会長・鈴木康友氏が「近年淡水魚やミツバチなどの減少原因は現在使用されている農薬のネオニコチノイド等の影響が大きい可能性がありますが、各分野の専門家の方々から詳しく説明してもらいます」と挨拶。
最初に登壇した山口大学国際総合科学部講師・杉野弘明氏は「釣りは資源の社会的センサー」と題し、1河川を5年おきにオイカワやウグイ等の棲息数を確認しているが減少傾向にあり、同時に2000年以降減少は水田に使用される農薬と関係があるのではという論文が多くなっていると解説した。
続いて国立研究開発法人水産研究・教育機構水産技術研究所主任研究員・坪井潤一氏が、「カワウの食性や行動を深堀」と題し、全国的にカワウによるアユやウグイ等の食害が深刻化している。対策として、カワウのコロニーの巣にドローンでペレット状のドライアイス入れるなどして駆除している漁協等があると紹介した。
続いて埼玉県環境科学国際センター研究推進室水環境担当部長・木持謙氏が、「環境DNA分析と採捕調査の平行実施の重要性と効果」について説明。環境DNA分析と採補調査は、長所・短所がほぼ正反対と解説。DNA分析は長所として川の水を採水して調べれば生物の棲息が確認できるが種類等が分からない。採補調査は多くの人員と時間が掛かるが、生物生存の確認性が高いと話し、釣り人の釣果情報は大変貴重だと述べた。
最後に登壇したのは、現在全国的に淡水魚の減少及び人間にも影響を及ぼしている可能性があり問題視されている農薬殺虫剤・ネオニコチノイドについて、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授・山室真澄氏自身がこれまで研究したデータを基に人間も含めた生物に与える影響を説明した。まず力説したのは、「水田のネオニコ排除が釣り場環境を再生する」と述べ、ネオニコチノイドが水田から川に流れることによりヤマメやハヤ、ウグイなどのエサとなるミジンコやエビなどの節足動物が減ってしまう。魚のエサが少なくなると当然魚の棲息数も少なくなると説明し、(公財)日本釣振興会の協力で実施した全国河川の水質調査結果も発表した。また、日本は大半が川水を浄化し安全基準に達した水を飲料水(水道水)にしているが、日本は欧州に比べネオニコチノイドの安全基準値が高いため、県によっては水道水が欧州の8倍の所もあり、参加者は驚きを隠せない状況だった。
講演会の最後に質疑応答が行われ、定員オーバーとなった会場の参加者は各講師の興味深い解説や分析に感銘を受けていた。