北国東北でも夏となれば熱中症アラートが毎日のように発令される時代。どんな釣り好きな人でも日中に長時間釣りをすることが過酷となった。特に磯場や防波堤などは直射日光の逃げ場がなく、輻射熱が強いフィールドだけに無理をすると命すら危険が及ぶこともある。比較的風が吹きやすく、体感温度が低めのサーフもしかりで、昔とは釣りスタイルを変えることが必要となってきている。
干潮の好時間帯狙いで現場直行
「本日の予想最高気温は36度」
2024年夏、そんな酷暑の日。午前10時30分に、宮城県仙台市・仙台駅に到着したのはカリスマサーフアングラー・堀田光哉氏。
「いや~、仙台も暑いですね~」
と、予想した通りの第一声。暑さをしのぐ意味で「まずは早めの昼食を摂りながら打ち合わせしましょうか?」と堀田氏に相談したが、「いや、これから干潮が絡む良い時間なので現場へ行きましょう」と即答。仙南サーフへ直行となった。
堀田氏によると、事前に現地の仲間から「産卵に入りかなり食いが渋く、釣れても単発」という厳しい情報を入手。「広範囲で釣れているタイミングなら地形などを見ながら探せますが、そういう状況ではないので、まずは最近いくらか釣れている唯一のエリアでやってみます」と向かったのは通称二ノ倉の北側エリア。
長い防潮堤を越えて海を見渡すと、「波気はちょうど良いし、水色も悪くない。風も多少あって涼しい。良い感じですね。今、ちょうど干潮でこれから上げの2時間が勝負だと思います。このように、真夏は朝夕のまづめや、潮汐による時合いを予想して釣行時間を絞ることで、体への負担を減らし、集中力も上がります。難易度は上がり、精度の高い戦略が求められますが、ゲーム性、1匹の価値は上がり、そこまでたどり着くプロセスがより楽しくなります」と堀田氏。早速準備にとりかかった。
堀田氏のタックル「仙南サーフver」
初期設定のタックルはサーフゲームの標準的なものとして、
ロッド:シマノ「ネッサSS S106M/MH」
リール:シマノ「ツインパワー4000XG」
ライン:シマノ「ハードブル8+」1号
リーダー:フロロカーボン6号(FGノットで結束)
ルアー:シマノ「熱砂 ビームドリフト 97S フラッシュブースト」
をセレクト。この中で特に注目なのは今秋新発売となった以下の2アイテム。
「ネッサSS」(10月発売予定)
1番と2番が大きく曲がり、3番のバット部は張りが強く残る、というこれまでのいわゆる「ネッサ調子」に比べて全体的に曲がる調子にしているのが大きな違い。それでいてブランクスにはロッドのネジレやつぶれを抑制する基本構造「スパイラルX」、強化構造「ハイパワーX」を採用し、全体的にシャープで軽い。また、ブランクス同士の継ぎ目をねじるようにしてつなぎ合わせる「スクリューロックジョイント」によって継竿における固着の防止、継ぎ目に生じるガタツキやズレの軽減、キャスト時などの高負荷での不意な破損を防ぐ。
仙南サーフにおいて、シンキングペンシル、ワーム、メタルジグなど色々なルアーを使うという人にはパワーがM+のS108MH+、S112MH+、S106M/MH、メタルジグメインという人には強めのS100M/MH+がオススメ。松島、石巻、県北エリアのそれほど飛距離が必要としない小規模なサーフであればS104Mといった若干ライトなスペックがマッチする。
「熱砂 ビームドリフト 97S フラッシュブースト」(9月発売予定)
既にリリースされている同125Sのダウンサイズモデルで自重は30g。シンキングペンシルながら水受けするカップが付いていることにより程良い引き抵抗があり、テールを左右に振る。一般的なシンキングペンシルは早引きすると回りがちだが、限界値が高く、サーフの複雑な流れの中でもしっかりアクションする。特に食わせの間となるフォール時はセンターバランスでヒラヒラとゆっくり落ち、かつフラッシュブーストのフラッシングによってアピールしてくれる。
第1ピリオド「ヒント探し」
さて、広大なサーフにおいてどうポイントを絞るのか。
「まず注目すべきは波が立つ位置ですね。いま干潮によって地形がはっきりすることで、正面両サイドに波が立って50m沖にサンドバー、瀬があるのが分かります。正面辺りは波が立っていないということは両サイドより深くなっているので、その境目、カケ上がりは1つ狙うべきポイントです。ただ、地形、離岸流云々ありますが、結局はベイトフィッシュ次第です。地形的には期待薄でもベイトフィッシュの群れさえ入っていれば釣れます」
第1ピリオドとして、干潮時間からの2時間が勝負。この限られた時間に、同じ場所で粘るのか、それともラン&ガンで広範囲を探るのか。ポイントのチェックを兼ねてエントリー箇所から南側へと釣りながら歩みを進めていく。
堀田氏の釣り方は至ってシンプル。キャストして一度必ず底を取る→ジャーク&フォール(一瞬着底)を2~3回行う→ストップ(一瞬着底)&ゴー(2~3回のリーリング)を波打ち際まで繰り返すだけ。「これはルアーが違っても同じです。難しいことはルアーに任せれば良いんです」。
そんな中、岸際に打ち上げられた大きな流木を発見した。「北海道から沖縄まで、流木がある箇所はなぜか釣れます。詳しい理由は分かりませんが、このような流木が行きつくということは流れや地形に何らかの原因があるからだと思います」と堀田氏。すると、正体は分からないが、「熱砂スピンビーム32GAイワシ」に当日初めてのバイトがあった。また、目安となる第1ピリオドを終えて、エントリー箇所へ戻る途中に5cm程度のカタクチイワシが岸際に打ち上げられているのを発見した。
ヒットまでは至らなかったが、「流木」「ベイトフィッシュ」というプラス要素を確認。勿論それが決定打になるものではないが、広大なサーフにおいて、かつ短時間釣行となると何もつかめず無駄に終わる可能性もある。この後の夕まづめの好時間を迎えるにあたりポイントを絞り込む目安を持てたことは大きかった。
真夏でもウェーダーを履く理由
ところで第1ピリオドを終え、一旦ウェーダーを脱いだ堀田氏。この炎天下ではさすがにサウナスーツのような状態かと思ったらインナーウェアもそれほど濡れておらず至って快適そう(一方、編集部の一般的なナイロンウェーダーは汗で大変なことに…)。理由を聞くと、「このDS4 ウェーダー チェストハイ ラジアルは、生地が透湿防水のドライシールド4層生地を採用しており、動いた際の湿度を外へ放出しするのでムレにくいんです。あとはインナーウェアとして吸水速乾素材のシマノ「サンプロテクション インナータイツ」と、速乾の和紙糸素材の「ペーパー ドライソックス」を履くことでさらに快適になります。ちなみに、海でのウェット(ゲーター)スタイルは個人的には合いません。濡れるとベタついて不快感は増しますし、車に乗る前にシューズ、ゲーター、パンツ類と全部脱いで、砂や潮まみれの体と脱いだ物を洗って、着替えて…ってかなり面倒じゃないですか。その点ウェーダーなら脱いだらすぐ車に乗り込めますから、真夏でもウェーダーのほうがトータル的に快適だと思います」と堀田氏。
第2ピリオド「まさかの1投目」
午後5時、若干暑さが和らぎ、上げ7~8分にあたるタイミングで、第1ピリオドと同じ、流木とベイトフィッシュが絡むポイントに再エントリーした。
【第2ピリオドのタックル】
ロッド:シマノ「ネッサSS S108M+」
リール:シマノ「ツインパワー4000XG」
ライン:シマノ「ハードブル8+」1号
リーダー:フロロカーボン6号(FGノットで結束)
ルアー:シマノ「熱砂 ビームドリフト 97S フラッシュブースト」
「昼より海側からの風が強まりましたね。これによってベイトフィッシュが寄ってくれれば良いんですが…」とキャストして釣りを再開。アクションは変わらず、着底度リフト&フォールを2回、その後ストップ&ゴーで手前へと探る。すると、リーリングをストップさせた瞬間にバイトがあり、鋭いフッキングが決まりヒット! とはいえ、あまり釣れていない状況ということは食いも浅く途中でバレやすい可能性がある。「ネッサSS」ならではの全体的に曲がる調子がいなし効果を発揮して慎重に寄せてくると、本命マゴチが波打ち際に見えた。波が寄せるタイミングを見計らい、ランディング。サイズこそ40cmクラスだったが、産卵期と短時間勝負という状況を考慮すれば非常に満足度の高い1匹だった。
その後も期待できそうだったが、やはり状況は厳しく連発とはいかない。日没前の絶好の時間には稲光を伴う雷雲が近づいてきたため、翌日の朝まづめに期待して早上がりとした。
第3ピリオド「フォールでラインが張った!」
午前4時過ぎ、前日と同じポイントに到着すると、見える範囲で20名ほどの先行者が既にロッドを振っていた。釣れていない状況でもこれだけ人がいることにその人気振りが伺える。ただその分、自由にポイント移動することは難しく、同じ場所で釣り続ける必要がありそうだ。
前日の状況からすると、干潮よりも満潮絡みの時間のほうが、マゴチが岸寄りにいて活性的にも安定していて口を使ってくれるかもしれない。果たして再現ヒットとなるか?
【第3ピリオドのタックル】
ロッド:シマノ「ネッサSS S108M+」
リール:シマノ「ツインパワー4000XG」
ライン:シマノ「ハードブル8+」1号
リーダー:フロロカーボン6号(FGノットで結束)
ルアー:シマノ「熱砂 ビームドリフト 97S フラッシュブースト」
午前4時40分、釣りスタート。朝まづめということで早々のヒットを期待したが、休憩を入れながら2時間が経過し、周りで釣れたのが2本といったところ。「全体の人数を考えれば少なく、やはり厳しい状況。それを考えると昨日の1匹はよく釣れましたね(笑)」と堀田氏。
フルキャストし着底後、6回のリフト&フォールからストップ&ゴーを開始。ちょうど払い出しの先にある流れが巻いている箇所に差し掛かった所でストップさせたその時、ややたるんだラインがピンと張った。「よし、食った!」と言いつつアワせると、「ネッサSS S108M+」が湾曲。サイズが良いようでマゴチ特有のヘッドシェイクの大きな振動がロッドに伝わり、衝撃を吸収しているのが分かる。楽しみながら慎重にやり取りし、寄せ波のタイミングを見計らってランディング。60cm近い良型で、かつ上から押さえ込むように食ったのか、ベリーフックは口に掛かり、テールフックは腹側に掛かる良い掛かり方だった。
厳しい状況の中、2日連続、しかも短時間釣行で本命キャッチ。この日も午前5時の時点で気温は30度を超えていたためこの1匹で納得した堀田氏は早々に釣行を終了。
「時間帯や潮汐を見ながら釣行時間を絞り、あとは現場で状況判断しながらルアーや攻め方を見極めれば、この暑い夏のサーフをもっと楽しめるはず」と締めくくった。