チョイ投げ専科 【PART 2】ウナギ釣り 特効エサ・ドバミミズ確保編

はじめに

二ホンウナギ(以下:ウナギ)は、奈良時代の『万葉集』で精の付く食材として取り上げられており、日本国民の食生活には欠かせない魚となっています。この食文化が残っている日本では、ウナギ達にとって「土用丑の日」は年に一度の災難なシーズンなのかもしれません(笑)。

そんなウナギは国際自然保護連合(IUCN)によって絶滅危惧種に区分されています。その根拠はウナギの幼魚であるシラスウナギ漁の水揚げ量が減少し続けていることです。日本国内の飲食店に流通している国産のウナギは、シラスウナギを捕獲しておいて出荷できる状態まで成長させた、養殖したものが大半を占めています。

逆に考えると、天然の成魚を採捕して食用として販売されているものは殆どありませんし、養殖以外のウナギ漁自体が産業として成立していない実態があります。また、シラスウナギ漁に携わる漁師数が激減し、それに伴い水揚げ量も減少し続けています。このウナギには、人口減少と少子高齢化という社会的な問題が背景に存在していると考えられます。

採捕禁止なのは幼魚のシラスウナギだが、資源保護の意味から成魚のウナギ釣りは節度を持って楽しみたいもの

そのため、日本国内ではシラスウナギ漁の制限が取られておりますが、同時に遊漁であるウナギ釣りについても、サイズ、採捕可能期間などの制限があります。ウナギ釣りをする際は、各河川ごとの漁業協同組合の規制が最優先さとなっていて、続いて各自治体が定めるルールに従う必要がありますので、釣り場の規制の有無を事前にチェックしてから釣行するようにしましょう。

そして我々釣り人は、定められたルールを遵守し、あくまでも趣味の範囲内で釣りを楽しむというスタンスで、ウナギに触ることを心掛けたいものです。

ドバミミズがイチオシ!

ウナギの成魚は、ゴカイ類、小魚、昆虫など何でも口にす雑食性のある獰猛なフィッシュイーターでもあります。また、夜行性が極端に強く、日中の明るいうちは大雨直後の泥濁りのような状態でなければ滅多に釣ることはできない魚です。

そんなウナギを釣るためには、「ドバミミズ」が最も効果的です。この数年にわたり、海釣りの万能エサであるアオイソメも試してみましたが、ドバミミズのほうが安定した釣果を示しました。ウナギは視覚よりも嗅覚が優れている可能性が高いと言われており、ドバミミズから発せられる独特の土の匂いが、ウナギに強くアピールしているのかもしれません。

農薬とドバミミズ

今から数十年も昔、米どころである東北や新潟エリアでは、コメの収穫が終わって稲ワラが積まれた堆肥場を道路端などで見かけることかできました。そこに置かれた稲ワラを持ち上げてみると、ドバミミズがニョロニョロと這い出してきた記憶があります。

ところが、いつからか農家では田んぼに大量の農薬を散布するように農協から指導されるようになり、徐々に堆肥場が姿を消し始めると同時に、ドバミミズを見る機会が大きく減少しました。もしかすると土の中にある有機物を捕食していたドバミミズは、農薬の影響で激減している可能性が無きにしも非ず…。

ドバミミズは高級エサ

太めのドバミミズを販売している釣具店もありますが、1,000円で買っても数匹しか入っていないレベルの高級エサです。そこで天然のドバミミズをゲットすることが、ウナギ釣りのスタートラインと言っても過言ではありません。そこで、ドバミミズがどんな場所に居て、どう保管すればいいのかなどを説明しましょう。

舗装道路沿い

ドバミミズを探すためには「北向きの日当たりの悪い斜面の下を掘る」のが良いと言われています。実際には土とコンクリートやアスファルトが接する面や際などから、沢山のドバミミズを捕まえることができています。

意外に多いのは右の画面のような、車道と歩道との区分になるコンクリート付近に積もっている腐葉土の部分。取材した6月上旬にこの土の部分を3箇所だけ掘り返してみると、約80匹のドバミミズを確保することができました。実釣で使えるサイズは最低でも10cm程度の長さのものが有効ですが、殆どがそのサイズをクリアしていました。

さらに条件が整えば、排水溝に接している土の中や、道路脇に設置されているU字溝も好ポイント。

特にU字溝の中に枯れ葉や土が堆積していて、しかも常に湿り気がある場所では、全長20cm以上の大型ドバミミズが大量に獲れるケースが多くなります。

ドバミミズ確保タックル(笑)

以上のように土を掘る作業となるため、素手で行うのは無謀と言うしかありません(笑)。この作業での必需品は次の通り。

まずは小型の熊手です。園芸用の移植ベラを使う人も多いかもしれませんが、熊手は枯れ葉や枝などを引っ掛けて掘ることが可能で、しかもドバミミズに当たっても滅多にキズを付けることがないのが嬉しいです。またドバミミズは1匹発見すると、同じ場所に数匹同居(?)しているケースが多く、優しく引いて土を掘ることができる熊手は強い味方になります。

ドバミミズは手で摘まんでバケツなどに入れますが、この際に薄手のゴム手袋(画像左下)があると指も汚れず、爪に土が入り込まず、匂いも最小限で抑えられるのでオススメです。

それから安全面の確保として、道幅の広い国道や交通量の多い国道沿いは、万が一の交通事故も考えられるため避けるようにしましょう。また、山間部で滅多に人が通らないような場所は、絶好のドバミミズポイントではありますが、クマなど動物が出没する可能性が高くなっています。どちらも身を守ることを再優先に考えて、ウナギ釣りの特効エサ、ドバミミズを確保するようにしましょう。

「エサ場」は複数確保すべし!

同じ場所で間隔を空けずにドバミミズを探そうとすると、あっという間に獲れなくなってしまいます。「エサ場」がリセットされるのは、急激な大雨で川が大濁りしたり、排水溝に大量の泥水が流れ込んだりする時になります。

ドバミミズは土砂や泥と一緒に流され、排水溝や道端で枯れ葉が積もり重なった場所で止まります。そして雨が降らず乾燥した日が続いても、その場所で繁殖して数を増やす行動を繰り返します。従って、自分で「エサ場」を4~5箇所のエサ場を開拓しておけば、ローテーションしながら安定してドバミミズを確保し続ける可能性が高まります。

保存方法

一般にドバミミズを採捕した場所の、土と枯れ葉を一緒にしておくと良いとされています。ところがその通りにした編集部は、現地で入れた土の中に混入していた虫が保管していたケースから這い出すという気分の良くないことを経験。続いて小バエが大量に発生して悲惨な状況に閉口…。更には何かの原因で数十匹入っていたドバミミズが全滅し、悪臭を放っていたなどという苦い経験もありました。

そこで実験し、成功しているのが次の保管方法です。

まずはトイレットペーパーをカッターナイフで細かく切り刻み、そこに予めカルキ抜きを済ませておいた水を投入、ドロドロになるまで掻き混ぜます。

次に、ほぼ均一になったら網などに乗せて水分を切り、最後は自分の手で軽く握り締め、水分を含んだ団子状態にした上でバラバラにほぐします。さらに新聞紙をハサミで細かく切り、その上から枯れ葉を被せ、その上から段ボールをケースのサイズに合わせてカットし、全体の蓋になるようにしておけばOK。最後はプラスチックケースの蓋に空気孔を空けておき、脱走しないように上から重しを乗せて保管作業は終了となります。この際、空気孔が大き過ぎると、ドバミミズがその穴から脱走して大変なことになります…(笑)。

プラスチックケース内の枯れ葉と新聞紙は、ドバミミズのエサとなるだけでなく、適度な湿気をキープしてくれるメリットもあります。昨年の実験データでは、2~3日に1回だけ軽く掻き混ぜ、霧吹きで水分補給しただけで、2週間で1匹も昇天することなく活かし続けることができました。

2~3日間放置しておくと、段ボールの上の糞でドバミミズが元気に這い出しているのが確認できる

唯一注意が必要なのは温度管理で、気温が25度を超えるような時は、大き目のクーラーボックスに水を凍らせたペットボトルと一緒にいれておけば、全滅するような悲劇は起こりにくくなります。

以上のように、特効エサであるドバミミズの確保から保管までが整ってからがウナギ釣りのスタートとなります。面倒に思われる人がいらっしゃるかもしれません。でも、車を運転しながら「エサ場」っぽい日陰の枯れ葉の山を発見した時は、ナビにプロットするクセが付いてしまいました。今ではウナギ釣りよりもドバミミズ取りのほうが楽しみになっているのかも…(笑)。

そんなドバミミズを持って、いざ、ウナギ釣りに向かいました! その様子は次回公開する「チョイ投げ専科 PART3」までお待ち下さいませ。

WRITER

釣り東北WEB編集部

株式会社釣り東北社

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「釣り東北WEB」の運営、取材、撮影、編集、映像制作をメインに行う。他、ワカサギの穴、トラウトステージといった東北で人気ジャンルの別冊を刊行。

株式会社 釣り東北社
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