投げ釣り専科【vol.7】 下北半島投げ歩き PartⅠ

シリーズ第1弾は陸奥湾沿岸の川内~脇野沢周辺のポイント巡り

プロローグ

春のカレイ釣りシーズンを迎え、青森県下北半島の数ある投げ釣りポイントを巡る「下北半島投げ歩き」の取材をスタートした。早春の下北半島界隈は津軽海峡のサクラマスジギングの話題で持ち切りだが、オカッパリではカレイ、アイナメを中心とした投げ釣りもハイシーズンのタイミング。そこで現地入りして取材をスタートさせたが、いきなり大きな課題にブチ当たった…。

遠方に住んでいる編集部は、下北半島は自然に包まれて魚影も濃く、訪れる釣り人の数も少なく、のんびりと釣りを楽しめるだろうという勝手なイメージが先行していた。ところが現地の釣具店などで情報を収集すると、以下のような問題点があることに驚かされた。

各港湾施設は主に都道府県が管轄し、各漁協が維持管理しながら場所を借りて作業を行っている。我々釣り人はその漁港などにおいて「暗黙の了解」を頂きながら釣りを楽しませて貰っている立場であることを忘れてはならない。

青森県内の漁港でよく見られる「ホタテ網」。これに悪戯、排泄などあってはならない行為

仮に自分の職場や自宅に、許可もなく車で乗り入れて騒ぐだけ騒ぎ、迷惑な行為をして後片付けもせず立ち去る人が居たとすれば、果たしてどう感じるだろうか? 

弊社は情報発信する立場として、多くの人に釣りの楽しさを伝え、更なるスキルアップの手伝いにしてほしいと願っている。しかし、記事の内容が逆効果になって地元に迷惑を掛けてしまい、立入禁止や釣り禁止の制限を講じられ、釣り場が失われてしまっては本末転倒である。ここに掲げた注意事項は、是非とも全ての釣り人の心に刻んでおいて頂きたい。長く将来に渡って「釣り」という文化を存続させるためにも…。

陸奥湾沿岸のポイントピックアップ

下北半島の大きな特徴はその独特な地形にあり、あらゆる方向の風裏が必ず存在するということだ。特に投げ釣りにとって風向きはポイント選びの大きな要因であり、できれば向かい風や横風よりも追い風となる場所で風を背負いたいところだ。今回は北風が強めの条件だったことから、追い風となりやすい陸奥湾側をチョイスし、幾つかのポイントを回ってみた。

九艘泊漁港(くそうどまり)

むつ市中心部から陸奥湾に沿って伸びる国道338号線を走ると、下北半島の「マサカリ刃」部分の南西端に続いている。その行き止まりにあるのが九艘泊で、平舘海峡に面して非常に潮通しの良いポイントだ。

防波堤先端から遠くに津軽半島北端方面を見る光景は、「最果ての地」を連想させられる

九艘泊の特徴

【水深】 防波堤では足下から約20m、4色(=100m)ほど沖では30~40mほどの水深がある。フルキャストしてミチ糸にテンションを掛けたままオモリが着底するまで沈めると、約40秒ものカウントを要する程の水深だ。従って様々な魚種が狙えるが、春の投げ釣りシーズンではカレイ類、アイナメ、クロソイを中心で、過去には変わった魚種としてアンコウが釣れた実績もある。

漁港のすぐ近くには地域で管理清掃してくれているトイレがあり、女性でも安心できる

【潮流】九艘泊は陸奥湾と日本海を繋ぐ平舘海峡の水路的な地形となっており、潮の影響を大きく受けやすい。大潮周りの干潮ともなると、オモリの着水点に対し、仕掛けを回収した時にオモリが水面に姿を現す位置が、100m以上もズレて流されていることも決して珍しくない。そのためミチ糸は同じ強度を維持するのであれば、直径が細く水の抵抗を受けにくいPEライン1~1.5号をオススメしたい。

【タモは必須】九艘泊の防波堤は足場が高く、良型の魚が掛かったらタモがないと話にならない。できれば6m前後のタモの柄がほしいところ。また陸側がすり鉢状の地形となっており、風向きが一定ではなく360度どの方向からでも風が舞う特徴がある。そのため不意に陸側から突風が吹くこともあり、荷物が飛ばされて海に落下することも考えられ、釣り座を構えたら「いの一番」でタモを準備しておき、釣りを終えて最後にタモを片付けるようにしておきたい。

九艘泊ではタモが最強の味方で欠かせない存在である

フェリー発着 脇野沢港(わきのさわ)

津軽半島の蟹田港と下北半島を約60分で結ぶ海路の入り口が脇野沢港だ。投げ釣りポイントとしては、フェリー発着場から伸びる防波堤がメインの釣り場となっている。フェリーは1日2往復となっており、港内を航行するのは着時刻10:20、15:00の2便、発時刻10:50、15:30の2便。従ってこの時刻は仕掛けを回収して手を止めてフェリーを見送ることになる。

脇野沢港の防波堤先端は狭い

メインの防波堤は駐車スペースから先端まで歩くと、路面の凸凹が多く歩きにくいばかりか、荷物を乗せて運ぶキャスターがガタガタ揺れてスムーズな移動を妨げる。

防波堤先端の赤灯台付近。足場が狭く、沖向きに三脚を並べるスペースはほとんどない

【狙いは航路か外海】脇野沢港は先端から投げにくいため、内側の航路のカケ上がりや防波堤外側方向が狙い方となる。ただし、早朝には漁業関係者が目の前を小船で通ることがあり、細心の注意が必要だ。

先端の角から20m程度の至近距離を、相当なスピードをだして船が通過するので要注意

【魚種は豊富】脇野沢港では様々なターゲットが竿先を震わせてくれる。春は投げ釣りでカレイ類、アイナメ、クロソイ。夏になるとマダイやクロダイ、秋にはエギングでイカ類も姿を見せる。フェリー乗り場には売店やトイレもあり、ファミリーでも楽しめるポイントだが、フェリー利用車両の駐車場と混同して駐車しないように注意したい。

桧川漁港(ひのきがわ)

脇野沢からむつ市内に向かって東に進むと幾つかの漁港が存在するが、投げると根掛かりするポイントが多く、あまり投げ釣りには向いていない。そんな中で春のカレイ釣りで実績があるのが桧川漁港だ。

桧川漁港の特徴

【ホタテ作業がミソ】桧川漁協では多くの船が沖でホタテ養殖作業を行っており、その網を洗い流す作業で、栄養分をたっぷりと含んだ水と貝殻やプランクトンなどが排出され、それを捕食しようとする魚類や甲殻類が集まって釣りのポイントを形成している。

桧川漁港は遠くにむつ市内の「釜臥山」が見える風光明媚なポイントだ

【テトラと海藻が釣り人を阻む】桧川漁港の最大の敵はテトラである。防波堤外側のテトラは足場が悪く、取り込みの際はかなり慣れた人でも注意が必要だ。また、春先は海藻がビッシリと生えており、取り込みの際に仕掛けや掛かった魚に絡んで釣り人の邪魔をする。

海底から水面まで伸びる藻が仕掛け回収を妨げる。場合によっては針が引っ掛かるトラブルも…

【大船団に注意】桧川漁港ではホタテ作業船が一斉に出航することが多い。陽が昇ってから合図が出ると、沖の離岸堤と防波堤の間の狭い航路を、20艘以上の船が沖に出て行く。この時、仕掛けを投入していると高い確率でミチ糸がスクリューに絡んで迷惑を掛けてしまう。そうかといって「ミチ糸沈め」で回避しようとしても、前述の海藻が絡んで「ミチ糸沈め」自体が根掛かってしまうパターンに陥って釣りにならなくなってしまう。

さらには、作業を終えた船が同じ数だけ沖からバラバラに戻ってくるため、午前中は鳴り響く船のエンジン音に細心の注意を払い続けなければならない。そのため使用するミチ糸は、比重の軽いPEラインはNGで、沈みやすいナイロンラインかフロロカーボンラインのほうが安心できる。

【午後がチャンス?】このように桧川漁港における朝まづめのゴールデンタイムは、船の動向次第ということを頭に入れておかないとトラブル続きとなってしまう。ホタテの作業が落ち着く午後からがオススメのポイントとなるが、潮汐のタイミングと陽の入り時刻を見ながらの、短時間の釣りを強いられるかもしれない。

川内漁港(かわうち)

桧川漁港から少しむつ市内に進むと、川内中学校の近くに川内漁港がある。漁港内にはトイレ付きの公園があり、家族連れにも便利なポイントだが、トイレは4月中旬まで閉鎖されているため、ゴールデンウィーク頃からがオススメだ。

港内のトイレは4月中旬から使用可能になる。遊具や芝生もあってお子様連れでも楽しめる

川内漁港の特徴

【狙いは外海】船が付く岸壁は広くなっているが、港内は水深が浅く投げ釣りにはあまり向いていない。春はマコガレイ、ヌマガレイ、イシガレイ、クロガシラガレイなど、複数種類のカレイが良く釣れる。

長い防波堤の外海側は広いポイントとなっているが、難点は足を乗せにくいテトラがビッシリと並んでいることだ。キャストする場所は広くシッカリとしているが、このテトラ問題さえクリアできれば、釣果は大いに期待できそうだ。

取り込みで苦労すること間違いなし。転倒や落下のリスクが高く決して無理はできない

【川内川の河口もワンチャンス】川内漁港のすぐ東側を川内側が流れている。ここは汽水域を形成することから、投げ釣りではヌマガレイの良型が出ることもある。大した川幅ではないため遠投は不要で、サーフロッドなど軽いタックルでも狙えるポイントだ。場合によってはシーバスなどが顔を出す可能性があるとかないとか…(笑)。

川内川河口部は幅も狭くチョイ投げで狙えるが、鳥には注意が必要だ(笑)

角違漁港(すみちがい)

むつ市内にある海上自衛隊大湊地方隊と川内漁港の中間地点にある小規模な漁港。沖に漁礁が沈められており、かつては船のカレイ釣りで賑わっていたが、近年はむつ湾のカレイ釣りが下火になっていることから、あまり釣果情報を入手することができない。

航路まで延びる右側の防波堤が魅力の角違漁港

角違漁港の特徴

この漁港周りは水深が浅い砂地となっている。水色が澄んでいれば1色(25m)ほど先の砂紋形状まで目視できて、海藻やゴミの存在も確認することができる。

外海側は足場も良くテトラも入っていないため釣りやすいが、水深がないことがネック?

【遠投派ならイケる?】この漁港はすぐ横を通る国道338号線から見えるが、編集部が何回通っても釣り人の姿を見たことがない(笑)。それだけ難しいポイントなのか、若しくは超遠投派なら太刀打ちできるのか、その真偽は試してみないことには分からない。興味のある人は勇気を出して、一度フルキャストで挑んでみてほしい。

気になる釣果…

以上のように下北半島陸奥湾側のポイントを幾つか触れてきた。最も気になる肝心な釣果については、PartⅡにつづく…。果たして本命のカレイは釣れたのだろうか?

WRITER

釣り東北WEB編集部

株式会社釣り東北社

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「釣り東北WEB」の運営、取材、撮影、編集、映像制作をメインに行う。他、ワカサギの穴、トラウトステージといった東北で人気ジャンルの別冊を刊行。

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