前編の通り2日目のラスト1投に初男鹿アオリイカをキャッチしたイカ先生こと、富所潤氏。良い流れに乗り3日目の最終日を迎えた。天候も予報通り、晴れでウネリもだいぶ落ち、程良い風が吹く中、男鹿半島北部の湯の尻漁港から桧山釣船店の提携船「広進丸」に乗り、本命の北エリアへ向け出港した。

〇シケ後の状況はいかに?
北エリアは遠浅な水深で、比較的なだらかな岩盤帯と海藻帯が広範囲に繁茂し、まさにティップエギングに最適な条件が整っている。またイカ先生曰く、日本を代表するティップエギングの名釣り場・能登半島と同様に日本海に大きく突き出た男鹿半島は、水温低下と共に暖かさを求めて南下する県北~青森エリアのアオリイカの群れが一定期間留まりやすい地形だという。確かに過去の釣果を見てもオカッパリ、ボート共にシーズン最後まで釣れるのは北エリアであることがそれを証明している。
さて、当日は同エリアによく釣行するロコアングラーの加藤一衛氏と伊藤弘基氏が釣り東北の撮影サポーターとして同船。船長と相談しながらポイントを決めていく。シケ後ということで深場に落ちた可能性も考慮し、北エリアの定番ポイントの1つ、北浦沖にある定置網跡周辺の水深27m前後から釣り始めることにした。

東系の風と残った西系のウネリがぶつかり、波立ちがやや不規則なことから2日目同様にエギの安定を重視して7ftクラスのロングロッド・シマノ「セフィア XR ティップエギングS72ML-S/R」、エギはやや重めでシマノ「セフィア アントラージュ シーグル 3.5号 フラッシュブースト」S2(35g)をセレクトした。
着底→シャクリ→ステイを1セットに、底を取り直して2~3セット行うのがティップエギングの基本だが、当日釣り人がイカ先生1人ということで、できるだけ広く探るために3方向へチョイ投げし、早々に1セットで回収、再投入していく。数投したところで、思ったより船がアップダウンしないことからロッドの操作性をより高めるため、やや短めの「セフィア XR ティップエギングS68ML-S/R」にチェンジした。
朝まづめの好時間ということでバンバンアタってくることを期待したが、2流ししてロングステイでアオリイカか魚か判別できないような微妙なアタリが数回あった程度。やや不安な立ち上がりではあったが、逆にこれで深場を見切ることができた。アオリイカはおそらくシケ前と同様の水深15m前後に居るはずと、ポイントを移動。しかし、底荒れと川水流入による濁りが思ったより回復していないことが1つ気がかりではあった。これが釣れない原因にならなければ良いが…。
〇まだ浅場にいた!
ほぼ北浦漁港真沖、シケ前に釣れていた実績ポイント水深13m前後に到着。イカ先生は、水深と流れを見てシマノ「セフィア アントラージュ シーグル 3.5号 フラッシュブースト」S1(28g)をセレクト。依然濁っている…というより陸寄りに移動した分、濁りが増した感さえある。そこはフラッシュブーストのフラッシングアピールに期待したいところ。

「濁りに対して釣り方で意識していることはありますか?」と質問したところ、イカ先生は「普段と同じことをする!」ときっぱり。前述した通り、ティップエギングは着底→シャクリ→ステイを繰り返すとてもシンプルな釣りだ。具体的にはエギを投入後、スプールオープンの状態でラインの放出を促すようロッドを適時振り、ラインを水面にU字状に置き、そのたるみが引っ張られていく動きが止まったら着底の合図。すぐさまリールハンドルを回してベールを戻し、一度ロッドを軽く振り上げてから戻すことにより適度なラインスラックを出した状態となり、そこから10~11時の方向でラインスラックを弾くように鋭くシャクり上げ、ロッドを戻すと同時にリールハンドルを1回転させてエギが移動した分のラインを巻き取る(巻きが多いとラインスラック不足で、逆に少ないとラインスラック過多になる)。これを1セットにバシバシバシバシバシ!と間を置かない連続シャクリを5~7回リズミカルに行い、ただちにロッドを水平に近い位置まで戻してティップにエギの重みを乗せて、竿先が若干お辞儀したままブレないように完全静止のステイを行う(動画で確認を!)。イメージとしてはシャクリで上昇したエギが惰性でそのまま水平姿勢に入る。この一連の動作の「精度」を高めれば高めるほど確実に釣果をアップできるのもこの釣りの特徴だ。
そんな一連の動作を軽やかに滑らかにこなすイカ先生。場所移動して間もなく、ステイ状態に入って1秒後、ティップがクンと引き込まれる明確なアタリ!と思った瞬間にはバシッ!と鋭いアワセが決まった。「よ~し、きたぁ~!」と安堵と嬉しさにニンマリのイカ先生。グーングーンとロッドを引き込むアオリイカ特有の引きを楽しみながらランディング! 胴長17cm前後のまずまずサイズをキャッチした。

〇ステイ直後のアタリが多いことの意味
さて、今回イカ先生の釣りを見て、一番驚いたのは「ステイ直後のアタリの多さ」である。大抵はステイから3~5秒位待ってからアタることが多く、直後にアタるのはアオリイカの活性が高い時にたまにある程度。しかし、今回濁りにより決して活性が高くなかった状況でも殆どが2秒以内、しかも半分近くが1秒未満でアタっていたのである。これが何を意味するのかといえば、普通はシャクリで活性を上げてもシャクリから完全ステイに入るまでのいわゆる「つなぎの間」が長くなりがち、あるいはその間のエギの動きに不自然さがあることでアオリイカが抱くのを一瞬ためらうのに対し、イカ先生のは完全ステイに入るのが圧倒的に自然で早い。もはやつなぎの間でさらに活性を上げているとさえ思えるほどだ。

基本的にこのつなぎの間でエギの頭が下を向くなど不安定に動いた途端にアオリイカはエギを見切ってしまうと言われており、またティップにラインが絡むのも含め、それらを防止するために殆どの人はロッドを水平にキープしつつラインスラックを極力出さないロッドストロークを小さくした「巻きジャクリ」を行う。これはこれで正解なのだが、巻きジャクリはどうしてもエギの動きが単調になる分、イカを最大限やる気にさせることは難しい。その点、イカ先生のシャクリはある意味真逆。ロッドを下向きの位置から真上くらいまで大きく振り上げラインスラックを弾くように連続でシャクり上げることで、エギがキュンキュンキュン!と巻きジャクリよりもダート性をキープしながら上昇、非常にメリハリの効いた動きでイカの活性を最大限に上げる。これもステイ直後にアタリが出やすい理由だろう。
しかし、これがすぐ誰でもできるかといえば否。何しろラインスラックによりティップ絡みしやすく、動作によっては逆にエギが頭を下げやすいデメリットがあるからだ。このコツとしては多くあるが主に、
・シャクリは手首ではなく肘を使って行う。
・風によるラインスラックが膨らむ方向と、ロッドのシャクリ軌道を重ねない。
・リールを巻いた瞬間に「ギッ」という感触があればティップ絡みした証拠。瞬時に察知し、リーリングを停止する。
・シャクリ直後~ステイのつなぎ間にラインテンションが緩まないよう、最後のシャクリが完了したと同時にリールハンドルを叩くようにしてその惰性で回しながらロッドを水平に近い位置まで戻し、そのままステイ状態に入る。
・ステイ時は、ロッドをブランデーグラスを指に乗せるように軽く持つ(というか乗せる)。
などがあるが、ようは「慣れ」しかない。いずれにしてもイカ先生のシャクリ~ステイの方法はかなりの熟練度を要するので、巻きジャクリで経験を積んでから習得努力をすると良いだろう。

〇男鹿の名物が変わる!?
話を戻し、その1杯を皮切りに、完全にエンジンがかかったイカ先生。釣れる度に撮影のインターバルを挟みながら2連、3連!(普通に釣りだけしていたらさらにヤバいことになっていたかも) イカ先生も「男鹿半島の名物はなまはげじゃなく、これからはアオリイカだぁ~!」と”舌”好調状態に突入した。
途中、中だるみの時間帯もあったが、エギを最軽量の「セフィア アントラージュ シーグル 3.5号 フラッシュブースト」S0(25g)に変更し、アタリ後にアワせて乗らなければ、すぐさまフリーフォールさせてフォール中に抱かせるというパターンを交ぜながらコンスタントに釣果を伸ばした。結果、胴長20cmオーバーの良型も5杯交じりながら23杯という好釣果で早上がり。濁りによりベストな状況ではなかったが、その状態でもこれだけ釣れることに驚き、男鹿半島が想像以上のポテンシャルを持った、日本を代表するティップエギングの好フィールドであると太鼓判を押してくれた。(終)
当日の爆釣の様子、ステイ直後のアタリの早さはこちらの動画をチェック!












◎タックルデータ
ロッド:シマノ「セフィア XR ティップエギングS72ML-S/R、S68ML-S/R」
リール:シマノ「ステラC3000S」「ヴァンキッシュC3000SHG」(ダブルハンドル換装)
ライン:シマノ「セフィア 8+」0.4号
リーダー:シマノ「セフィア マスターフロロリーダー」2号
エギ:シマノ「セフィア アントラージュ シーグル 3.5号 フラッシュブースト」S0,S1,S2